Gmailで「一部の宛先だけ届かない」「特定ドメインで弾かれる」といった話を耳にしませんか?
原因は送信ドメイン評価低下に伴う迷惑メール判定だけではなく、RFC 5322(Request For Comments 5322)に基づくメールヘッダーの厳格化、Message-IDの仕様違反の可能性もあるのです。
たった1文字の不備がメールの不達を招き、メール配信までに積み重ねてきた努力を無にします。
実は、2025年9月上旬にGoogleのGmailが、メールの技術仕様であるRFC 5322の準拠を静かに厳格化しているという情報が届きました。
これまで
「多少の違反なら大丈夫でしょー」
と見過ごされてきた仕様の曖昧さが、いまメールの不達という形で現実のものになりましたので、皆さまに何が起きているかお伝えいたします。
現場から届いた、衝撃の不達報告
「なぜか一部のお客さまへのメールが届かない」
送信サーバーの設定やDNSの問題かと思いきや、意外な原因が判明しました。それは、誰もが当たり前に付与しているMessage-IDヘッダーでした。
実際にGmailから返ってきたエラーメッセージがこちらです。
550-5.7.1 [10.11.12.13] Messages missing a valid Message-ID header are not accepted.
これは「有効なMessage-IDヘッダーのないメッセージは受け付けません」という意味のエラーメッセージです。
これまで曖昧に解釈されてきたRFC5322のルールが、突然、強固なフィルタとして立ちはだかった瞬間でした。
メール不達の原因は「コロン」だった
メール不達の原因を実際に調査すると、その原因はMessage-IDに使われていたコロン(:)でした。
Message-ID: <customer:some-id:some-other-id@something.isp-domain.example>
RFC 5322の仕様(dot-atom-text)では、@の左右に使えるのは英数字と一部の記号(.、-、_など)のみで、コロンはNGなのです。
ログやメタデータを埋め込む際に便利だからと使われがちですが、RFCという「インターネットの憲法」には真っ向から違反していたのです。
メールに従事するITエンジニアがすぐに見直すべき3つのポイント
1. 誤った特殊文字の使用
コロン(:)はもちろん、その他の未定義文字も禁止です。代わりに、ハイフン(-)やアンダースコア(_)を使用し、生成処理で必ず対処を行いましょう。
2. ドット(.)の誤用
- 連続した
..は不可 - 文字列の先頭・末尾にドットを配置するのも不可
ちょっとした実装ミスで簡単に違反となるため、生成ロジックにバリデーションを組み込むのが安全です。
3. ユニーク性の確保
Message-IDは「世界中で一意」であることが前提です。メールクライアントやサーバーはこれを基準に重複検知を行うため、同じIDを使い回すことは厳禁です。
推奨される形式は次のように、タイムスタンプ+ランダム値+自社ドメインで構成する方法です。
<1640995200.12345.67890@mail.primoposto.co.jp>
Googleの動きは「氷山の一角」
今回のMessage-ID厳格化は、Googleが進める「メールの標準準拠強化」のほんの入り口にすぎません。SPF、DKIM、DMARCと同じように、RFC 5322の細部まで検証される時代が幕を開けようとしているようです。
お客さまへの重要な
- 通知メール
- マーケティングメール
- パスワードリセットメール
これらが「届かない」という事態は、信頼失墜やビジネス損失に直結します。小さな仕様違反が、取り返しのつかない結果を招くのです。
今こそMessage-ID生成ロジックを点検しよう
「自分のシステムは大丈夫」と思っている方も、念のため確認してください。Message-IDは普段意識されにくい部分ですが、今やメール配信の成否を握るカギとなっています。
Gmailが示したこの厳格化は、メール業界全体への強いメッセージです。RFC準拠はもはや「推奨」ではなく「必須」。対応を先送りすれば、確実にメールがお客さまに届かない未来が待っています。
最後に
お客さまにメッセージが届くことは、信頼が届くこと。小さな改善が、大きな機会損失を防ぎます。
今回解説した内容は、単なる技術的な仕様ではありません。Gmailをはじめとするメールサービスがルールを厳格化する中で、あなたのサービスがお客さまと確実につながり続けるための生命線です。
突然メールが届かなくならないように、
(1) コードの緊急監査:Message-IDの生成ロジックを再点検し、コロン(:)やその他の未許可文字が使われていないか確認する
(2) 不達ログの再点検:Gmail宛てのメールログをさかのぼって確認し、同様の拒否エラーが発生していないか確認する
もし修正に不安がある、または迅速な対応が必要な場合は、システム導入を支援してくれたベンダーなどの専門家にご相談ください。
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