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IPウォームアップの正しいやり方。配信前にやるべき技術設定とリスト整備

2026.03.25
日吉 浩之のプロフィール写真

株式会社プリモポスト 取締役

日吉 浩之 メール到達エバンジェリスト

明日から少しずつメールを送ろう!と実行に移す前に、必ず確認すべきことがあります。それは「技術的な設定」と「メールリスト(シードリスト)の準備」です。

完璧な送信スケジュールを立てても、

  • 送信設定に誤りがある
  • 宛先リストがエラーを起こす
  • 配信メールがエンゲージメントしない

このような環境だと、インターネットサービスプロバイダ(以下、ISP)からのIP評価は攻撃者が使うIPだと学習し、逆に評価が悪化してしまいます。

今回の記事ではIPウォームアップを確実に成功させるために、やっておくべき4つの事前準備を解説します。

1.メールの身元証明:迷惑メール業者ではないことを「公的書類」で証明する

メールを送り始める前に最も重要な技術的ステップが、GoogleやMicrosoft社の送信者ガイドラインにも記載されている

  • SPF
  • DKIM
  • DMARC

のメール認証プロトコルの設定です。

サイバー犯罪がメール経由で発生するなか、メールの受信BOXを提供しているGoogleなどのISPは、送信者が「なりすましメール」ではないか常に警戒しています。

上記3つの設定は、役所に届出を行う「公的な身分証明書」のような役割を果たしています。

SPFは「住民票」

SPFは地元の役場に転入届けを出したらもらえる住民票だと思ってください。あなたの送信ドメインを使ってメールを送信してよい「IPアドレス」を予め登録する仕組みです。

例えば、あなたのメール送信用ドメインがGoogleのIPから送信して良いと設定すれば、それ以外のIPから配信された場合、なりすましメールと判断されるのです。

「このIPアドレスは、確かにうちのドメインの住民(正規の送信元)です」と証明する住民票のようなものです。

DKIM(ディーキム)は「印鑑証明書」

DKIMはメール文面が改善されないために、暗号化された電子署名を送信メールに付与する仕組みです。途中でメールの内容が改ざんされていないことを証明します。

つまり「間違いなく本人が実印を押した本物の書類である」ことを証明します。セキュリティソフトが件名に【注意】などと入れるだけで、DKIMが反応し、なりすましメールと判断します。

自社で文面を変更するセキュリティソフトを入れている場合、お客さまのメールを受信できないリスクがありますのでご注意ください。

DMARC(ディーマーク)

SPFとDKIMの認証に失敗したメールが届いた際、受信側にどう処理すべきかを指示するルールブックです。

  • 何もしない(none)
  • 迷惑メールフォルダに送る(quarantine)
  • 受け取らない(reject)

上記の3つのいずれかを設定します。最初の導入時は”none”を設定いただき、メール設定に誤りが無いことを確認してから、quarantine・rejectに引き上げます。

GoogleやMicrosoft社などは、これらの認証を送信者にメールを受信するための必須条件として定めています。IPウォームアップ開始前に、設定が正しく行われているかを必ず確認してください。

なお、設定確認には当社が取り扱いをしているPowerDMARCなどをご利用いただきます。

2.サブドメインを活用して、メールの種類ごとに評価を独立させる

Apple社の送信者ガイドラインにも記載されていますが、メールの送信は用途ごとにわけることが推奨されています。

これは、お客さまと本当にコミュニケーションを取りたいメールが不達にならないようにするためです。他部門のIPならびにドメイン評価の悪影響を受けないよう、用途に応じドメインやサブドメインを分けることを検討ください。

コーポレート用(通常業務)

@yourcompany.com

マーケティング用(メルマガ・プロモーション)

@marketing.yourcompany.com

トランザクション用(サンキューメール・パスワードリセット)

@receipts.yourcompany.com

特にマーケティング用のメールは、読者から「迷惑メール報告」を受けやすい傾向にあります。

すべてを同じドメインで送っているとご想像通りのことが起きます。

数字を追いかけるマーケティング部門からのメールによりIPとドメイン評価が下がることがあります。

そうすると、絶対に届けたい「購入完了通知」や「B2Bの日常の業務メール」まで迷惑メールフォルダに入ってしまう危険性があります。これは当社のお客さまでも実際に起きている事象です。

3.リストの徹底的な管理!バウンス率は「3%以内」が鉄則

手入れがされていない送信先のリストにメールを配信すると、IPウォームアップは確実に失敗します。

特に、宛先不明などでメールが届かない「バウンス(エラー)」の割合は、全体の3%以内に抑える必要があります。

新しいIPからエラーを連発すると、ISPはすぐにあなたを攻撃者(迷惑メール業者)とみなします。

もし自社のリストを使ってIPウォームアップを行う場合は、当社のメールクリーニングサービスをご利用のうえ、次のようなステータスのメールアドレスを排除してください。

使い捨てのメールアドレス

一時的にしか使われないアドレスはエンゲージメントが無いため、IPクールダウンにつながります。

スパムトラップの駆除

スパムトラップとは、ブラックリストを管理している事業者がネットワーク上に紛れ込ませている罠のアドレスです。送信してしまうと一発でブラックリスト入りする危険があります。

Catch-All(キャッチオール)の排除

ウォームアップには最も適さないメールアドレスです。サーバー側の設定により、生死がわからないお化けメールアドレスです。

IP評価を下げるリスクが高いため、ウォームアップ用のリストには適していません。必ず除外しましょう。

メールアドレスのクリーニング後に行っていただきたいこと

ウォームアップ用のリストを整えたら、過去30日以内にメールを開封したりクリックしたりしたエンゲージメントする「最も反応の良いお客さま」だけを抽出し、ウォームアップ初期のターゲットにしてください。

「あなたのメールは読者に望まれている」という強力なプラスのシグナルをGoogleやMicrosoftに送ることができます。

4.無料ツールでIP評価を把握する

IPウォームアップはツールを使わなければ、目を閉じて車を運転しているようなものです。

しっかり目を開けてトラブルを早期発見し、送信ボリュームを減らすなどの軌道修正を行うために、次の監視ツールに必ず登録してください。

Google Postmaster Tools

Gmail宛の送信に関する重要なデータを提供してくれます。ドメインやIPの評価、迷惑メール報告率などを確認できます。完全無料で使えるため、必ず導入してください。

導入方法については、こちらの記事でご紹介しておりますのでご覧ください。

Google Postmaster Toolsの導入方法を解説|知らないうちに“迷惑メール送信者”になっている?

※なお、ドメインとIPの評価機能については2025年10月末での終了がGoogleから発表されていますが、環境によってはまだデータを確認できるケースもあります。その他の迷惑メール率などの指標は引き続き確認可能です。

SNDS(Microsoft向け)

Smart Network Data Service(SNDS)はOutlookなどを運営するMicrosoftが提供するツールです。専用IPで運用される方は、Microsoft社からのフィードバックを受けられるので必ずご利用ください。

※SNDSは「専用IP」を利用している場合のみ有効なツールです。IP評価や、ユーザーが「迷惑メール」ボタンを押した際の情報をフィードバックしてくれます。

最後に

事前の、

  1. 認証設定(住民票と印鑑証明)
  2. ドメインの分離
  3. リストの徹底的な掃除
  4. 監視ツールの導入

これら4つの準備が完璧に整って初めて、IPウォームアップをスタートする資格が得られと考えてください。

IPウォームアップは、ただ単純にメールの送信数を増やしていく作業ではありません。ISPからの信頼を一通一通積み上げていく繊細なプロセスです。

準備が1つでも欠けていると、その後どれだけ丁寧に配信してもIP評価は上がらず、むしろ「攻撃的なメールの送信者(迷惑メール送信者)」としてIPが学習されてしまうリスクすらあります。

逆に言えば、今回ご紹介した準備を確実に実施すれば、ウォームアップの成功確率は飛躍的に高まります。

万全の態勢を整えたうえで、小さく始めて、慎重に育てていく。この基本を徹底することが、最短で安定したメール到達率を手に入れるための近道です。

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