Postfixを運用するデメリットは?隠れたリスクと移行の判断基準
Postfixは、Linux/Unix系OSで動作するオープンソースのメール転送エージェント(MTA)です。古くから主流だったSendmailに代わり、
- 堅牢性
- 安全性
- 高性能
さから、令和の現在も世界中のメールインフラを支えています。
実際、Postfixは設計段階からセキュリティを重視しており、Sendmail時代に多発した「脆弱性そのもの」を突いた大規模インシデントは、格段に少なくなりました。
ただ、ここで注意が必要です。Postfixの一番のリスクはプログラムのバグではなく、サーバーを管理する人による「設定のミス」が原因で発生します。
システムの”あるある”でPostfix関連の事故のほとんどが運用上のミスによるものなのです。
つまり、「無料で使える」Postfixですが、その裏側には専門知識を使った運用と監視が何年にもわたり継続的に必須という重い責任があります。
単に「メールが送れる」という状態と、「取引先に確実に届き、迷惑メールと間違われない」という状態は別の話です。
Postfixの自社運用を継続することが、コスト削減どころか巨大なビジネスリスクになっている可能性のある企業の特徴を解説します。
デメリットだらけ。Postfix運用をやめたほうがいい企業 4つの特徴
自社のリソースや体制が以下の特徴に当てはまる場合、Postfixの運用はメリットよりもリスクが上回っている可能性が非常に高いです。
(1) 社内に「メールのセキュリティ専門人材」がいない企業
Postfixは設定ミスが致命傷になります。設定ファイル(main.cf)のミスや、なりすまし対策であるSPF・DKIM・DMARCの設定不備は、オープンリレーによる不正中継といった事態を招きます。
結果、メール送信用の自社IPがSpamhausなどのブラックリストに登録されたり、GoogleやMicrosoftから「不審な送信元」と見なされ、自社のメールがお客さまに届かない事態が発生します。
国内のクラウドメール配信サービス(ブラストエンジン, ベアメール, センドマジック)へ移行し、専門家に運用を任せるべきです。
(2) IPレピュテーション(送信元の信頼度)を能動的に管理していない企業
Postfixを自社サーバーで運用することは、自社の送信用IP評価のマネージメントを自身で行う必要があります。
- 3%以上のバウンス発生
- 0.3%以上の受信者からの迷惑メール報告
などを放置すると、送信ドメインの評価はもちろん、送信IPの評価も低下します。一度「信用できない送信IP」と見なされると、いくら送信メールに価値があってもメールは届かなくなります。
自社で送信IPとドメインの評価マネージメントが厳し方には、高い評価を維持・管理している有料のクラウドサービスへの移行が安全です。
(3) 大量メール(1日1万通以上)を扱うマーケティング部門がある企業
Postfixは”マーケティング用のメール届ける”ことは専門としておりません。
GoogleやMicrosoft社の受信BOXに合わせた送信を行わないと、”一時的エラー”や”遅延”が頻発し、売り上げを伸ばす機会を失う可能性が発生します。
また、同じキャンペーン用とB2Bのドメインが同じドメインの場合、全社メールがブロックされる「巻き添え事故」が発生する危険があります。
マーケティング活動に適用した高トラフィック向けの専用配信エンジンや、マーケティングメールに特化したクラウド配信サービスへ分離するべきです。
(4) コンプライアンス・監査対応が求められる業界(金融・公共・医療など)
OSSであるPostfixは、「運用責任の所在がすべて自社にある」ことを意味します。セキュリティインシデント発生時、ログの不備や管理体制の甘さが、法的な説明責任を果たせないリスクにつながります。
万が一の事故の際、法的な責任を問われるリスクがあるため、セキュリティ監査対応済みのクラウドサービスを利用する方が、はるかに低いコストでコンプライアンス要件を満たせます。
Postfixをやめるべきか? 5つの判断基準
次の項目に1つでも「はい」が当てはまる場合、貴社はPostfixを安全に運用できる体制になく、リスクを抱えている状態です。複数該当の場合、自社運用はデメリットだらけと判断すべきです。
- 体制:✅メール担当者が他業務(情シスなど)と兼任している場合
- 知識:✅SPF/DKIM/DMARCの役割と設定内容を説明できない場合
- 経験:✅ブラックリスト登録の解除を自社で行ったことがない場合
- 管理:✅メールの到達率やバウンス率を数値で管理していない場合
- 仕組:✅配信停止(Unsubscribe)の処理を自動化できていない場合
最後に
Postfixの運用は、単なるサーバー保守ではなく、「メールが届く」という企業の生命線を守るための、高度なセキュリティ・マーケティング・法務の知識を要求される専門業務です。
もし貴社が上記のリスクや判断基準に当てはまる場合、俗人的な運営になりがちな「自前主義」を見直し、リスクを分散できる専門のクラウドサービスへ移行することが、最も現実的かつ安全な経営判断と言えます。