SPFレコード上限の壁対策!SPFレコードのフラット化で10回制限を突破
企業から送る大切なメールが、なぜか迷惑メールフォルダに入ってしまったり、そもそも相手の受信ボックスに届かなかったり..。
「うちのメールシステムは大丈夫なはずなのに、なぜ?」
こんなことを感じたことはありませんか?その原因は、相手のメールサーバーがあなたのメールを「ニセモノ(なりすまして)」だと疑っているからかもしれません。
メールの信頼性を証明するはずのSPFレコードに、実は「見えない2つの壁」が存在するのです。
今回は2つの壁の正体と、それを打ち破る解決策「SPFフラット化」について、国内外のサービスを事例に挙げながら、分かりやすく解説します。
メールの「身分証明書」であるSPFレコードとは?
SPFは、ドメインからのメールが、本当に正規のサーバーから送られたものであるかを証明する仕組みです。
これは、あなたのドメインの信頼性を守るための、いわば「身分証明書」のような役割を果たします。
具体的には、あなたのドメインのDNSサーバーにSPFレコードという「TXTレコード」を公開します。このレコードには、メール送信を許可するサーバーのIPアドレスやドメインがリスト化されています。
受信側のメールサーバーは、メールを受け取った際にこのリストをチェックし、送信元が許可されたサーバーかどうかを検証します。
SPFを設定することで、あなたのドメインを騙るフィッシング詐欺や迷惑メールを防ぎ、正規のメールを確実に受信者の受信箱に届けやすくなります。
SPFレコードに潜む、2つの「致命的な壁」
SPFは非常に重要な仕組みですが、DNSの技術的な仕様により、2つの厳しい制限が存在します。これが、多くの企業が直面する、メールの到達性を妨げる「見えない壁」の正体です。
1つ目の壁:TXTレコードの文字数制限(最大255文字)
「TXTレコード」は、保存できる文字数に上限があります。たくさんのIPアドレスやドメインを記述すると、すぐにこの制限に達してしまいます。
2つ目の壁:DNSルックアップ回数制限(最大10回)
SPFレコードには「include」というコードを使って、外部のメールサービス(例:SendGridやSalesforce)を参照することができますが、この外部参照の回数が10回までと厳しく決められています。
現代のビジネスでは、複数のクラウドサービスを利用してメールを送るのが当たり前です。
- Office 365/Google Workspaceからの通常のメール
- Mailchimpからのメールマガジン
- Salesforceからの営業メール
- HubSpotからの自動返信メール
これらのサービスはそれぞれ独自のSPFレコードを持っています。
あなたのSPFレコードに、これらのサービスを「include」で追加していくと、ルックアップ回数はあっという間に10回を超えてしまいます。
ルックアップ回数が10回を超えたSPFレコードは、無効と見なされます。
10回を超えると、以降のサービスからのメールは認証されなくなり、正規のメールが不達になったり、迷惑メールに分類されたりするリスクが格段に高まります。
これは、ビジネスの機会損失や自身のブランドイメージ低下に直結する、非常に深刻な問題です。
SPFの壁を打ち破る!「SPFフラット化」とは?
このSPFの壁を根本的に解決するのが「SPFフラット化(SPF Flattening)」です。
SPFフラット化とは、SPFレコードに記述された複数の外部サービス(「include」)を、最終的なIPアドレスのリストに変換する技術です。
これによって、ルックアップ回数をわずか1回にまで減らすことができます。
例えるなら、これはバラバラになった家族の住所録を、1枚の紙にまとめるような作業です。
- おじいちゃんの家(Google Workspace)
- おばあちゃんの家(Office 365)
- お兄ちゃんの家(メールマガジンサービス)
- お姉ちゃんの家(顧客管理サービス)
これらの家族がメールを送る際に、それぞれの住所が書かれた紙(「include」)をあなたの住所録(SPFレコード)に貼り付けると、あっという間に住所録が10枚を超えてしまいます。
SPFフラット化サービスは、この問題をスマートに解決してくれる賢いお手伝いさんだと思ってください。
お手伝いさんは、家族全員の最終的な住所(IPアドレス)をすべて集め、それらをたった1枚の新しい紙に書き写してくれます。
この1枚の紙が、フラット化された新しいSPFレコードです。
この紙にはもう「他の紙を見てね」という指示は書かれていないので、「10枚まで」というルールは関係なくなります。
どんなに家族が増えても、お手伝いさんが自動で新しい住所を1枚の紙にまとめてくれるので安心です。
なぜSPFフラット化はビジネスに不可欠なのか?3つの理由
SPFフラット化は、単に技術的な問題を解決するだけでなく、ビジネスに大きなメリットをもたらします。
理由その1:メールの到達率が劇的に改善する
SPFエラーがなくなることで、正規のメールが迷惑メールと誤認されるリスクがほぼゼロになります。これにより、お客さまへの重要な通知やプロモーションメールが確実に受信箱に届くようになります。
理由その2:運用負荷から解放される
SPFフラット化サービスは、各サービスのIPアドレスの変更を自動的に検知し、SPFレコードを更新してくれます。頻繁に変わるIPアドレスを手動で確認・更新する手間がなくなり、運用担当者の負担を大幅に軽減します。
理由その3:セキュリティが盤石になる
SPFが常に正しく機能することで、フィッシング詐欺やドメインのなりすましに対する防御が盤石になります。これは、企業やお客さまの情報を守る上で、最も重要な要素の一つです。
SPFフラット化を実現する国内外の代表的なサービスを紹介
SPFフラット化は、主にDMARC管理プラットフォームの一部として提供されることが多いです。これらのサービスは、単なるフラット化だけでなく、IPアドレスの自動更新やエラー通知といった付加価値を提供しています。
当社取り扱いありサービス
Autospf
非常にシンプルなインターフェースで、SPFフラット化に特化したサービスを提供しています。わずか数分で導入が完了し、リアルタイムでSPFレコードの自動更新を行うのが特長です。
PowerDMARC
DMARC管理に強みを持ち、その一環として「Hosted SPF」という機能でSPFフラット化を提供しています。メール認証のレポート機能が充実しており、セキュリティの可視化を重視する企業に選ばれています。
当社紹介のみ
ベアメール SPFホスティング
日本の企業向けにSPFホスティングサービスを提供しています。迷惑メールスコアリング機能と組み合わせた、総合的なメールセキュリティソリューションの一部として利用できます。国内のサポート体制を重視する場合に選択肢となります。
MxToolbox
メール管理者にとって有名なツールセットで、有料サービス「Delivery Center Plus」の一部としてSPFフラット化機能を提供しています。SPFだけでなく、DMARC、DKIM、ブラックリスト監視など、メールの到達性を総合的に管理したい企業に適しています。
SPFフラット化とDKIM・DMARCの連携でメールセキュリティをより盤石に
SPFフラット化によってSPF認証の成功率が高まることは、メールセキュリティ全体の向上にも繋がります。
メールセキュリティは、SPF単体では完璧ではありません。SPFが「送信元は正しいか」を証明する一方で、DKIMはメールの改ざんを検知する「電子署名」の役割を果たします。
さらに、DMARCは、SPFとDKIMの両方のチェック結果に基づいて、メールを「受け入れる」「拒否する」といった最終的なルールを定める「交通整理役」です。
SPFフラット化によってSPFの認証成功率がほぼ100%になることで、DMARCのポリシーがより正確に機能することになります。
そうすることによって、ドメインなりすましに対する防御がさらに強固になり、企業全体のメールセキュリティレベル向上につながります。
最後に
今日のビジネスにおいて、メールはお客さまとのコミュニケーションの生命線です。そのメールを確実に届けるためには、SPFの技術的な課題を乗り越えることが不可欠です。
SPFレコードのフラット化は、10回というルックアップ回数制限の壁を打ち破り、メールの到達率を劇的に改善する、強力なソリューションです。
あなたのドメインのSPFレコードは、きちんと機能しているでしょうか? SPFチェックツールを使って一度確認してみることをお勧めします。
そして、もしルックアップ回数に悩んでいるのであれば、SPFフラット化サービスの導入を検討し、メールの信頼性とセキュリティを今一度強化しましょう。