Gmailの「青いチェックマーク」を表示させるには?商標未登録でもCMCから始めるBIMI導入ロードマップ
DMARCポリシーを「p=reject(拒否)」や「p=quarantine(隔離)」まで引き上げ、なりすまし対策を強化された企業の担当者さま、まずは大きなマイルストーンの達成、お疲れさまでした。
ただ、セキュリティ担当者としては「これで安心」でも、メールを受け取るお客様や取引先には、その努力は見えにくいものです。
「このメールは本当に安全なのか?」
という不安を払拭し、一目で「本物だ」と伝えるためには、もうワンステップ必要です。
それが、BIMI(ビミ)による企業ロゴの表示です。
本記事では、BIMI導入の最大の障壁となる「商標登録の待ち時間」と「かかる費用」に焦点を当て、
「まずはCMCから始め、最終的にVMCで青いチェックマーク(認証バッジ)を目指す」
という、最も現実的で無駄のない導入ロードマップを解説します。ぜひ、最後までお読みください。
DMARCの次は「見た目」で信頼を勝ち取る
DMARCを
- 「p=reject」
- 「p=quarantine」
まで到達させた企業は、技術的ななりすまし対策という大きな第一歩を完了しています。
しかし、どれほど堅牢な仕組みを整えても、それは受信者の目には見えません。安全性を“伝わる価値”へ変えるためには、もう一段階、ブランドとしての信頼性を視覚的に示す取り組みが必要です。
その鍵となるのが、BIMI(Brand Indicators for Message Identification)の導入です。
BIMIを設定すると、受信トレイに並ぶメールの送信者アイコン欄に、
- 無機質な人型アイコン
- 頭文字だけが表示された簡易アイコン
の代わりに、企業公式のブランドロゴが表示されるようになります。日頃から見慣れたロゴが表示されるだけで、受信者は「これは本物のメールだ」と直感的に理解できます。
実際、多くの企業がBIMI導入後に「メールを開く前の安心感が増した」という声を得ています。
特に、
- ECサイト
- 金融機関(金融庁が導入をするように推奨)
- サブスクリプションサービス
のように「なりすましを受ける可能性が高い領域」では、ロゴが表示されているだけで開封前の心理的ハードルが下がり、メールの閲覧率が向上したというデータも報告されています。
また、フィッシング詐欺に対するユーザーの警戒心を和らげる効果も期待でき、自社のブランド体験そのものを底上げする施策として注目されています。
DMARCが“裏側の安全性”を守る仕組みだとすれば、BIMIは“表側の信頼”をつくる取り組みです。
メールを通じて自社ブランドの信頼価値を最大化するためには、この「技術 × デザイン」による二段構えが不可欠になりつつあります。
最大の壁は「商標登録に半年かかる」という現実
BIMIを表示するためには、ロゴの所有権を証明する「電子証明書」が必要です。ここで多くの企業が直面するのが「商標登録の壁」です。
最高ランクの証明書である「VMC」を取得するには、特許庁への商標登録が必須となります。しかし、商標登録は申請から完了まで、昨今は早くて半年、長ければ1年近くの審査期間を要しているようです。
「これから商標を申請する」という場合、その審査を待っている半年間、せっかく導入したDMARCの効果を「ロゴ表示」として活用できないのは大きな機会損失です。
そこで検討すべきなのが、2つの証明書の使い分けです。
1. VMC ( Verified Mark Certificate )
- 対象: 特許庁に登録された「登録商標」を持つロゴ
- 特長: Gmailなどでロゴが表示され、信頼の証である「青いチェックマーク」が付与される。
- 難点: 商標登録が必須であり、取得に半年程度の期間を要する。
2. CMC ( Common Mark Certificate )
- 対象: 商標登録がなくても、1年以上使用している実績があるロゴ
- 特長: Gmailなどでロゴ表示が可能。
- メリット: 商標審査の半年間を待たずに、今すぐロゴ表示を開始できる。
なお、1年以上のロゴの利用実績はWeb Archiveなどを利用して確認します。
気になる費用感:VMCとCMCの相場
導入コストについても確認しておく必要があります。日本国内の主要な発行元であるGMOブランドセキュリティ社と、DigiCert社(市場相場)の費用感を見てみましょう。(記載価格はすべて年額・税別です)
GMOブランドセキュリティ社の場合(VMCを取り扱い)
国内で手厚いサポートを受けられるGMOブランドセキュリティ社のVMC発行費用は以下の通りです。
- VMC発行費用: 180,000円 / 年(1商標につき1枚)
- マルチオプション(追加ドメイン): 144,000円 / 年 (※1枚の証明書で、複数ドメインに対応させる場合)
※上記費用とは別に、貴社へのDMARC設定支援、ロゴ調整、申請代行などの費用が発生します。
DigiCert社などの市場相場(CMC/VMC)
CMCの取り扱いがある証明書発行元の場合、費用は以下の傾向にあります。
- VMC(商標あり): 年額 20万円台前半から
- CMC(商標なし): 年額 16万円台から20万円程度
一般的に、商標審査が不要な分、CMCの方が若干安価に設定されているケースが多いですが、大きな価格差はありません。
重要なのは「数万円の差」よりも、「商標を待つ半年間、ロゴなしで過ごすか、CMCで信頼を勝ち取るか」というスピード感の差です。
推奨ロードマップ:「まずはCMC」から始める
「期間」と「費用」という2つの制約を踏まえると、商標未登録の企業が最小コストで最大の成果を得るための最適解は、
“まずはCMCで運用を開始し、商標登録完了後にVMCへ切り替える”
という段階的なアプローチです。
待ち時間をムダにせず、メールチャネルの価値を最大化する合理的な手順といえます。
Step 1:CMCで即時スタートし、半年の機会損失をゼロにする
商標登録の申請と並行して、まず最初に行うべきはCMCの取得です。
CMCは商標登録を必要とせず、1年以上使用しているロゴであれば申請が可能なため、審査の待ち時間を挟まずに導入できます。
多くの場合、最短で数週間以内に証明書が発行され、Gmailなど主要サービスでブランドロゴの表示が始まります。
この「数週間で成果が出る」というスピード感は非常に大きく、半年近い商標審査をただ待つのとは大きな差です。
競合他社がまだデフォルトアイコンのままメールを送っている中、自社だけが先にブランドロゴを表示できれば、それだけで信頼性・ブランド認知・開封誘導の面で優位に立つことができます。
加えて、DNSレコードの追加などの技術的設定もこの段階ですべて完了し、後のVMC切替もスムーズになります。
Step 2:DMARC運用の成果を“見える化”し、社内外で評価される状態に
CMCによるロゴ表示は、単なる見た目の改善ではありません。DMARCによって裏側で守られている安全性が、受信者にとっても「目で見てわかる安心感」として伝わります。
特に、
- 会員登録メール
- パスワードリセット
- 請求関連メール
など、お客さまにとって重要な通知は、ロゴが表示されることで信頼性が大幅に向上します。
また、社内の非技術部門(マーケ、営業、カスタマーサクセスなど)がDMARCの効果を理解しやすくなるため、
- メールの到達性向上
- ブランド強化
に取り組む意義が社内全体で共有しやすくなるという副次的効果もあります。
Step 3:商標登録完了後、VMCへ切り替えて“青いチェックマーク”を獲得
半年〜1年後、商標登録が完了したら、いよいよCMCをVMCへアップグレードします。
VMCに切り替わることで、これまでのロゴ表示に加えて、Gmail上では青いチェックマーク(認証バッジ)が付与され、ブランドの信頼度がさらに一段階引き上げられます。
このバッジはGmailが“真正なブランドであることを認証した証”として表示され、フィッシングが多発する現代において、受信者に強い安心感を提供します。
- 新規のお客さま獲得
- ブランドの保護
- メールマーケティングの改善
など、幅広いビジネス領域でメリットが期待できます。
最後に
最後にお伝えしたいのは、“商標がないから何もできない”という思い込みが、最大の機会損失になるということです。
半年から1年にも及ぶ商標審査の期間を、デフォルトアイコンのまま過ごしてしまえば、本来得られるはずの
- 信頼
- 開封率向上
- ブランド価値向上
のチャンスを丸ごと逃してしまいます。
今、貴社が取るべき道は次の通り。
- 【完了】 DMARCポリシーを
rejectまたはquarantineにする - 【今ここ!】 商標審査の待ち時間は、CMCでロゴ表示を先行スタートし、半年の機会損失をゼロにする
- 【最終ゴール】 商標登録が完了したらVMCへ切り替え、「青いチェックマーク(認証バッジ)」でブランドの信頼を最大化する
この3ステップで進めれば、“ドメインを守る”セキュリティ対策(DMARC)と “伝わる”信頼構築(BIMI)を、時間的ロスなく実現できます。
受信者に「このメールは本物だ」と一目で伝わる世界を、最短ルートで手に入れてください。