「キャッチオール判定が多い」は悪いサイン?|B2Bリストで本命の企業ほどキャッチオールになる理由
「メールクリーニングを依頼したら、キャッチオールの判定がずいぶん多かった。このリスト、大丈夫ですか?」
法人向けのメールマーケティングや営業リストを担当していると、一度はこんな場面に出会うのではないでしょうか。結果の一覧に「キャッチオール」が並ぶと、リストの質が悪いのではと不安になります。
ですが、B2Bのリストでは、これは必ずしも悪いサインではありません。むしろ、狙った企業にきちんと届くリストになっている証拠であることも多いのです。今回は、キャッチオールが生まれる仕組みと、どんなドメインで多いのか、そして最近の検証技術で何が変わったのかを整理していきたいと思います。
キャッチオールとは:存在しないアドレスでも「受け付けます」と答えるドメイン
検証ツールが「わからない」と答える理由
メールアドレスの検証では、相手のメールサーバーに「このアドレス宛てに送ってもいいですか」とSMTPで問い合わせ、その応答で実在を確かめます(SMTPプロービング)。通常は、存在しないアドレスなら拒否の応答が返ってきます。
RCPT TO:<taro@example.co.jp> → 250 OK(受け付ける)
RCPT TO:<xyz12345@example.co.jp> → 550 User unknown(存在しない)
キャッチオール(catch-all)のドメインは、存在しないアドレスに対しても「250 OK」と答えます。
RCPT TO:<taro@example.co.jp> → 250 OK
RCPT TO:<xyz12345@example.co.jp> → 250 OK(存在しなくても受け付ける)
これでは、問い合わせだけでは本物と偽物の区別がつきません。そのため多くの検証ツールは、こうしたアドレスを「有効」とも「無効」とも言えない「キャッチオール」として返します。
どのくらいあるのか
米国のメール検証サービスZeroBounceは、2025年に同社が検証した110億件超のアドレスのうち、9%以上(10億件超)がキャッチオールだったと公表しています(ZeroBounce:Which Domains Commonly Use Catch-All Email Configurations)。そして、大企業中心のB2Bリストでは、この平均よりも高くなるのが普通だとしています。
キャッチオールになりやすい5つのドメイン
キャッチオールになる理由は、ドメインの種類によってまったく違います。
| ドメインの種類 | キャッチオールになる理由 | 特徴 |
|---|---|---|
| Microsoft 365 | 受信の仕組み上、外部からの問い合わせにキャッチオールのような応答を返すことがある | 管理者が設定したわけではない「見かけ上のキャッチオール」が多い |
| Google Workspace | 管理者が「キャッチオールアドレス」の設定を有効にしている | 退職者宛てや古いアドレス宛ての取りこぼしを防ぐ目的が多い |
| 大企業の独自ドメイン | IT部門の方針で意図的に有効にしている | 監査・保存の要件、取引先からの連絡の取りこぼし防止、古い設定の名残 |
| 官公庁・大学 | 集中管理のシステムや、公的機関ならではの要件 | 大学は学部ごとにシステムが違い、同じ組織でも結果がそろわないことがある |
| 中小企業 | 問い合わせを1通も逃したくないという理由で、初期設定のまま使っている | 理由は単純だが、割合は大企業より小さい |
特に知っておきたいのは、Microsoft 365です。ZeroBounceによれば、Microsoft 365は管理者がキャッチオールを設定していなくても、外部からの問い合わせにキャッチオールのような応答を返すことがあり、B2Bの検証でキャッチオール判定が出る最大の要因の1つだったといいます。
官公庁と大学について、ZeroBounceが挙げているのは米国の .gov と .edu です。日本の .go.jp や .ac.jp についてのデータはありませんが、集中管理のシステムや学部ごとの運用という事情は共通しているため、同じ傾向があると考えてよいでしょう(筆者の見解)。
本命の相手ほどキャッチオールになる「パラドックス」
ここに、B2Bならではの皮肉な現象があります。営業やマーケティングで一番アプローチしたい相手ほど、キャッチオールと判定されやすいのです。
大企業、官公庁、大病院、大学。どれも本命のターゲットになりやすい組織ですが、インフラの規模やコンプライアンスの要件から、キャッチオールを採用していることが多い組織でもあります。
ZeroBounceは、大企業中心のリストであれば、キャッチオールが30%以上あっても警告ではなく想定の範囲内だとしています。ここで「キャッチオールは全部削除」と機械的に除外してしまうと、リストの中で最も価値の高い連絡先を、自分で捨ててしまうことになりかねません。
検証技術の進化で何が変わったか
これまで:見極めに最大48時間
とはいえ、キャッチオールと判定されたアドレスが本当に届くのかを見極めるのは、これまで簡単ではありませんでした。ZeroBounceの場合、通常の検証に加えてスコアリングなどの追加の分析が必要で、方法によっては結果が出るまで最大48時間かかっていたといいます。スピードが求められる営業の現場では、この待ち時間がボトルネックでした。
2026年6月から:通常の検証の中で判定できるように
ZeroBounceは2026年6月、Microsoft 365、Google Workspace、主要なメールセキュリティゲートウェイで受けているドメインについて、多くのキャッチオールのアドレスを通常の検証の中で「有効」「無効」と判定できるようにしたと発表しました(ZeroBounce:ZeroBounce Improves Catch-All Email Validation With Faster Results)。SMTPでの問い合わせだけに頼らず、プラットフォームごとの特徴を問い合わせの前に見分けるようにしたものです。
同社によれば、Microsoft 365関連のキャッチオール判定は、以前は月に約600万件ありましたが、現在は1,000件未満にまで減っています。
しかも、「そのドメインがキャッチオールの設定かどうか」という情報は、これまでどおり残ります。
| メールアドレス | 検証結果 | キャッチオールのドメインか |
|---|---|---|
| brian@company.com | 有効 | はい |
| brian1@company.com | 無効 | はい |
「このアドレスは届きそうか」と「このドメインはキャッチオールか」を、別々の判断材料として使えるようになった、ということです。
担当者が今やること:キャッチオールが多い結果を受け取ったら
上から順に確認してください。
- 結果の内訳を見る。有効・無効・キャッチオール・不明がそれぞれ何件か。キャッチオールの割合だけで、リストの良し悪しを決めない
- キャッチオールをドメイン別に集計する。上位に並んでいるのが本命の取引先や大企業なら、前述の「パラドックス」の状態で、異常ではない
- 上位ドメインのメールサーバーを確認する。MXレコードを見れば、Microsoft 365かGoogle Workspaceかがわかる
dig +short MX example.co.jp*.mail.protection.outlook.comならMicrosoft 365、aspmx.l.google.comなどならGoogle Workspace - 一律に削除しない。以前に検証したリストなら、最新の検証にかけ直すと、キャッチオールの多くが「有効」「無効」に振り分けられる可能性がある
- 残ったキャッチオールには、少量から送る。いきなり全件に送らず、反応の良い層から段階的に配信し、バウンスの割合を見ながら広げる
- 「キャッチオールのドメインかどうか」を、検証結果とは別の列で残しておく。次回以降のリスト整理や配信の優先順位づけに使える
最後に
B2Bのリストでキャッチオールが多いことは、リストの質が悪いことを意味するとは限りません。大企業や官公庁、大学といった、本来届けたい相手が含まれている証拠であることも多いのです。
大切なのは、「キャッチオール」という結果をそのまま除外の理由にせず、なぜその判定になっているのかを理解したうえで、届くアドレスと届かないアドレスをできるだけ正確に見分けることです。
弊社の「メールクリーニングの窓口」では、こうした最新のキャッチオールの検証に対応しています。海外のサービスを直接契約しなくても、国内の窓口から日本語で、スピーディーにリストを整理できます。B2Bリストの運用でお困りの方は、お気軽にご相談ください。