Googleがドメイン評価とIP評価がわかる「Postmaster Tools v1」の提供を10月末で終了します
Googleは、メール送信者向けの無料ツール「Gmail Postmaster Tools」の旧インターフェース(v1)を、2025年9月30日(火)をもって廃止し、2024年にローンチした新バージョン(v2)へ完全に移行すると発表しました。
この変更は単なるUIの更新ではなく、メール到達率戦略の大きな転換点となります。
https://support.google.com/a/answer/16594218
これまで多くの送信者が参考にしてきたドメイン評判やIP評判のチャート(スコア)はv2から削除され、今後は
- SPF
- DKIM
- DMARC
といった基本的な技術標準はもちろん、普段からのメール配信におけるエンゲージメントの管理などが決定的な重要性を持ちます。
IT担当者やメールマーケティングに携わる方は、この大きな転換に備えて戦略を切り替える準備が必要です。なお、10月20日過ぎに10月一杯をもってv1のサービス停止が正式にアナウンスされました。

Googleはなぜ今「IPとドメイン評判スコア」の姿を消すのか?
Google Postmaster Toolsのv1バージョンでは、メールの迷惑メール率やレピュテーションスコアを提供し、送信者がメールの到達率を改善する手がかりとしていました。
ただ、Googleが4段階で提供する2つの評価スコアは、経験が浅いメール配信担当者にとってはどのような意味を持つのか、サポートがないと非常に理解が難しいものでした。
今回、GoogleがPostmaster Toolsをv2に一本化する理由は次の通りと考えられます。
実用性の重視
曖昧なレピュテーションスコアに頼らず、SPFやDKIMの認証失敗など、具体的な技術的コンプライアンス情報として提供。
セキュリティの強化
SPF・DKIM・DMARCなど基本的な認証技術の順守を促し、なりすまし・フィッシングメールへの防御を強化。
効率的な運用
v2のクリーンなインターフェースで問題点を素早く特定し、即座に対策が可能。
Google Postmaster Toolsのv1とv2の重要な変更点
| 項目 | v1(旧版) | v2(新版) | 影響と対応 |
|---|---|---|---|
| レピュテーション情報 | ドメイン・IPの評価スコアを表示 | 廃止予定 | スコアに頼らず、認証とエンゲージメントで評判を築く戦略への転換が必須 |
| データの焦点 | 過去の送信状況、迷惑メール率など | 認証準拠度、コンプライアンス情報 | 技術的な認証エラーを最優先で修正する必要あり |
| API | v1 API(廃止予定) | v2 API(2025年末までに公開) | データスキーマ変更への対応(移行作業)が必要 |
| ダッシュボード | 旧インターフェース(廃止) | 新インターフェースのみ閲覧可能 | 2025年9月30日(火)以降、順次にv2に移行 |
| 提供情報 | 迷惑メール率、一部の認証データ | 認証情報に加え、コンプライアンスステータス、ドメイン管理APIなど実用的なエンドポイントを拡充 | 技術的認証に基づく改善策を優先的に行う |
メール配信のIT担当者がすぐやるべき5つの準備
Googleが突然通知をしてから、すぐにサービス停止ということにはなっておりません。ただし、来る日に備え、次のような準備を進めてください。2025年11月1日に向けて準備を進めてください。
1. 認証設定の「緊急」総点検と整備
現在のv2では認証(なりすまし対策)の合否が最重要シグナルです。認証エラーが発生していると、メールは即座に迷惑メール判定さる可能性が極めて高まります。
| 認証項目 | 今すぐやるべきこと | 理由 |
|---|---|---|
| SPFレコード | メール送信に使うすべてのIPアドレスやサーバー(CRM、ESPなど)がSPFレコードに漏れなく含まれているか確認し、不一致があれば修正します。 | SPFエラーはなりすましと判断され、即ブロックの原因となります。 |
| DKIM署名 | 利用中のすべてのメール配信サービス(ツール)で、DKIM署名が有効化され、DNSに公開鍵が正しく設定されているか再度確認します。 | DKIMはメールの改ざん防止の証明です。 |
| DMARCポリシー | DMARCを導入し、ポリシーをnone(監視モード)から、徐々にquarantine(隔離)やreject(拒否)へと強化するロードマップを策定・実行します。 |
DMARCは認証失敗時のメールの取り扱いをISPに指示する最終防衛ラインです。 |
2. v2ダッシュボードでのデータ監視体制への完全移行
v1のデータは消失するため、早めにv2のデータに慣れ、「合否」ベースで配信性を評価します。
3. API連携の移行計画と予算確保
v2のAPIは2025年末までに公開される予定です。公開され次第、すぐに移行に取り掛かれるよう、開発リソースと予算を確保してください。
また、v2 APIはデータスキーマ(データの構造)が変更される予定のため、コードの書き換えが必須となります。
4. 送信リストの厳格な緊急クリーニング
IPとドメインの評価スコアがなくなるため、普段から迷惑メールの通報率と開封などのエンゲージメント率を注視していくつ必要があります。リストの質が悪いと、すぐにドメイン全体の信用が失われます。
メールクリーニングを定期的に実施するとともに、サンセットポリシーを設けメール配信リストの最適化を常に図ってください。
5. エンゲージメントを最大化するコンテンツ戦略の実行
メールが受信トレイに届いたとしても、受信者が開封しなければドメイン評判は下がり続けます。受信者が必要としないメールは配信しないようにし、受信者に迷惑メールと通報されないような関係性を構築ください。
最後に
v1終了は単なるUI変更ではなく、メール配信業界の時代の流れによるものです。
Googleは「スコアではなく、送信者ガイドラインを遵守しているか」、また「適切なリストにメールを配信してエンゲージメントが発生しているか」を重視しています。
今後、機能追加が予想されるv2の新機能は未知ですが、サンセットポリシーを作り、きれいなリストでメール配信を続けることが今後の安定運用の鍵となります。