スパムハウスが語るメールマーケティング成功の3原則 – 信頼・配信・ウォームアップ –
メールマーケティングは、ビジネスにとって非常に強力な武器ですが、平成時代に行っていたような「単に大量に送ればよい😎」というものではありません。
これは令和の時代。サイバー犯罪がメールを起点として発生するケースが増加しているなか、一定の対策&ルールを守らないとメールが届かなくなっているからです。
Googleなどの送信者ガイドラインを遵守しないと、送信IPやドメインの評価が落ち、メールが迷惑メール扱いされ、メールがお客さまに届かない時代になっています。
ここで非常に参考になるのがスパムハウス(Spamhaus) の「Sending Marketing Emails(マーケティングメール送信)」 FAQです。
スパムハウスは世界最大級の迷惑メール対策やブラックリストを管理&提供する専門機関として、送信者側にも有益なガイダンスを提供しています。
今回はスパムハウスが、どうしたらメールマーケティングが成功するかFAQ形式で提供しています。その中でも最重要と思える3つの対策をご紹介いたします。
適切な許可(confirmed opt-in)を取り、リストの質を保つ
スパムハウスが最も重視する基本原則の1つは「Confirm Opt-In(COI)」の徹底です。スパムハウスは、受信者が自分でメール購読を明示的に許可したアドレスにのみ送るべきだ、と強く推奨しています。
当社も経験がありますが、スパムハウスのブラックリストに掲載され、デリスト対応を行おうとしたときによく聞かれる
「どうやって、このアドレスを取得した?」
という内容にリンクします。
1.許可取得の徹底
最初の登録だけではなく、確認メールを用いた COI によって真の意思を確認します。
これを導入することで、入力ミスや意図しない登録、さらにはスパムトラップをリストに入れてしまうリスクを下げられます。
なお、リストの品質を高めるため、登録時のフォームにおいて、プリモポストが提供するリアルタイムのメールクリーニングサービスを活用することが非常に有効です。ユーザーがアドレスを入力した時点で、そのアドレスが
- 有効であるか
- スパムトラップの疑いがないか
- ハードorソフトバウンスとならないか
をリアルタイムで確認し、問題のあるアドレスの登録を未然に防ぐことができます。入力フォームにメールアドレスが入った瞬間、AJAX機能を使ってAPIでメールアドレスをクリーニングし、メールアドレスの有無効を確認します。
2.透明性と期待設定
メルマガの購読時には
- どのような内容を
- どの頻度で
- どのテーマで
メールを送るかを明示し、購読者に期待を持たせるべきです。
スパムハウスのFAQでは購読フォームや登録ページ上で、メルマガ購読の性質(頻度、内容、購読条件など)をきちんとわかりやすく伝えることが推奨されています。
3.データ品質とメンテナンス
メールリストは最低1年に1度はクリーニングすべきです。スパムハウスは、
- バウンスするメール
- スパムトラップや乗っ取りを受けているメールアドレス
- 使い捨てのメールアドレス
などを除外することが、IPやドメインの評価を守る鍵になると回答しています。これらを行うことで、メールが受信BOXに届き、読者との関係構築においても強固な土台ができます。
高い配信率と評判を維持するための技術と運用
2つ目は “配信性(Deliverability:デリバラビリティ)” に関するものです。スパムハウスは技術的な設定と運用体制を整えることが重要だとFAQで示しています。
1.メールのなりすまし対策(SPF・DKIM・DMARC)
スパムハウスはSPFとDKIMによる認証を「最低限必須」としています。これは、GoogleやMicrosoft社も同様のことをガイドラインで示しています。
特に SPF レコードは「許可する送信元 IP を限定する」ことが重要で、無差別にすべての IP を許可してしまうと悪用リスクが高まります。DMARCポリシーを”reject”にすることをGoalとして設定ください。
2.正しいドメインと IP 運用
スパムハウスのFAQでは、明確な「正直な事業者アイデンティティ」の確立を重視しています。
匿名化されたWhois情報の登録避け、実在するビジネスのドメインを使い、サーバー構成も正しく整えることが求めています。
使用する送信IPアドレスは必要以上に多く分散させず、できるだけ連続する IPを使うなど “見た目にも安定した送信元” を実現するべきと示しています。
3.メールアドレスのクリーニング
送信メールのアドレスに、
- 長期間開封されていない
- バウンスしているアドレス
が混じっていると、送信元が迷惑メールの送信者であると判定されるリスクが高まります。
スパムハウスのFAQ では
「定期的なリストのセグメンテーションとメールクリーニング」
が推奨されており、特に開封率などが低下した購読者の扱いには注意が必要です。
当社の記事で何度も示しておりますが、サンセットポリシーを制定し、開封率40%を目指すような運用が必要です。
4.送信頻度と予測可能性
スパムハウスは定期かつ安定した送信パターンを推奨しています。突然の大量送信やボリュームの激変は、サイバー犯罪を行う攻撃者の振る舞いとみなされやすいため避けるべきです。
また、メルマガ購読者のエンゲージメントを定期的に評価し、長期間反応がない人にはサンセットポリシー(例えば「継続するか確認する」メールを送るなど)を導入するのが望ましいとされています。
これらの技術的・運用的な対策をしっかり取ることで、メールが受信トレイに届きやすくなり、迷惑メール判定のリスクを下げることができます。
IP・ドメインのウォームアップで評価を構築する
3つ目は、メール送信におけるウォームアップの重要性についてです。メール送信に、新しいあるいは長く使っていなかった
- IPアドレス
- ドメイン
で、いきなり大量送信に使うと、迷惑メール判定されるリスクがあります。当社は新規ドメインにおいて、2通目のメールでスパムハウス社のリストに掲載された経験もあります。慎重な対応が必要です。
1.ウォームアップとは何か
スパムハウスFAQでは、ウォームアップを次のように定義しています。
「新しい、または非アクティブな IP&ドメインから送信量を徐々に増加させ、受信者やISP(GoogleやMicrosoftなど)に信頼を築いていくプロセス」
2.具体的なガイドライン
スパムハウスではウォームアップを実施するにあたり、下記のようなガイドラインを発表しています。
- 初期段階では、1日1,000 通以下 の送信から始める。
- 最初の週は、送信量を急激に倍増させないこと。スパムハウスは”最初の数日で倍々ゲームで配信しない”ことを推奨しています。
- ウォームアップ中は直近でメルマガを開封した購読者に絞って送る。これは開封率やクリック率を高め、ISPに良いシグナルを送れるためです。
ただし、当社の経験上1日1,000通というのは非常に多い送信数であり、ISPの反応を考えるとさらに慎重な対応が必要です。ウォームアップ時は開封率を最低50%以上を目標としてください。
3.商用ウォームアップサービスの利用について
スパムハウスは、商用のウォームアップサービスの利用を推奨していません。ただし、禁止とも伝えておりません。
これらのサービスは時として “エンゲージメントを不正に操作” し、評判システムを欺こうとするものがあるため、リスクもあるということを示しています。
月間に何十万通も送るような配信者にとつて、サードパーティを使わないウォームアップの実施は非現実的だと考えられます。
なお、IPとドメインのウォームアップをせずに一気に送信すると、受信サーバーから攻撃者の疑いを持たれ、ブラックリスト入りにつながる可能性があります。
これは2025年10月にNHKが起こした、「NHK ONEの新規アカウント開設事故」が非常にわかりやすい事例となります。
スパムハウスのみならず、Googleなども “急なボリューム増加” がサイバー犯罪の攻撃者と見なすことから、評価を下げる典型的な原因として行うべきでないと示しています。
最後に
スパムハウスのFAQを読んでいくと、メールマーケティングで成功するために必要な根本的な考え方が明確になります。
- メルマガ配信の許可を得ること
- なりすまし対策を行い信頼性を技術と運用で維持すること
- IPとドメインの評価を少しずつ&段階的に育てること
この3本柱です。
もしあなたがメールマーケティングをこれから構築する段階にあるなら、まずは対策を実運用に落とし込んでみてください。
1年に1度、送信者リストを見直し、なりすまし対策を行い、必要に応じてウォームアップすることで、長期的な成功と高い配信率が見えてくるはずです。
Googleはスパムハウスのリストを使っていないと言われているため、Googleの送信者ガイドラインなども併せて遵守していく必要があります。
ただ、行うことは同じです。きちんとなりすまし対策を行い、送信用のIPとドメインの評価を高めながら、お客さまが望む価値をお届けするようにしてください。