心理学の力。「コミットメントと一貫性」の原則をマーケティングに活用する!
「コミットメントと一貫性」は、マーケティングの世界で非常に重要な概念です。これは、個人が自分の過去の行動や決定に対して一貫性を保つ傾向を指します。人々は、一度コミットしたことに対しては、その習慣を続けるように強く動機づけられます。
この心理学の原則は、「イエスの連鎖」というテクニックに活用されています。「イエスの連鎖」は、人々が一度 “はい”と答えると、その後も “はい”と答え続ける傾向を利用した手法で、特に営業やマーケティングの現場でよく見られます。
営業の場面での事例
例えば、営業マンが顧客に対して、”あなたはビジネスを成長させたいと思っていますか?” という質問をします。この質問に対して、ほとんどのビジネスオーナーは “はい”と答えるでしょう。次に、”あなたのビジネスにとって新規顧客獲得は重要ですか?”という質問をします。これもまた、ほとんどのビジネスオーナーが “はい”と答えるでしょう。
最後に、”私たちのサービスを使えば、新規顧客獲得を助けることができます。どう思いますか?”という提案をします。この時点で、顧客は既に2回 “はい”と答えているので、3回目の “はい”を引き出す確率が高くなります。このように、イエスの連鎖を利用した営業戦略は、顧客のコミットメントと一貫性の原則を巧みに活用することで、高い成果を生む可能性があります。
チャリティー団体での事例
チャリティー団体でも、イエスの連鎖は有効に利用されています。例えば、ある団体の代表者が次のような質問を投げかけることを考えてみましょう。
- あなたは環境問題について心配していますか?
- あなたは地球を守ることが大切だと思いますか?
- 我々の団体は環境保護活動に取り組んでいます。寄付を考えてみてはいかがでしょうか?
これらの質問は、人々が同意しやすい内容から始まり、次第に具体的な行動へと導くよう設計されています。このように、イエスの連鎖を利用することで、人々のコミットメントを引き出し、結果的に寄付行動に繋がります。選挙演説などでもよく見られる手法です。
BtoBマーケティングの場面での事例
BtoBマーケティングでは、企業間取引のマーケティング戦略もしっかりとした理論に基づいています。商品やサービスの購入は、課題解決のために行われ、その解決策は一貫性を持つ必要があります。
例えば、ある企業が新たな製品ラインを展開したとします。その製品に興味を持った見込み客に対して、営業担当者は以下のような質問を投げかけるかもしれません。
- あなたの会社では、生産効率を向上させることは重要ですか?
- 新しい技術を導入することで、生産効率が大幅に向上するとしたら、それに興味はありますか?
- 私たちの新製品は、最先端の技術を利用して生産効率を大幅に向上させることができます。導入を検討してみてはいかがでしょうか?
このようなアプローチを通じて、見込み客は自社の課題とその解決策について考え、最終的には新製品の導入を検討するようになるかもしれません。BtoBだから特別なことがあるわけではないのです。相手は人であり、チャリティー団体が行っている手法と本質的には同じなのです。
マーケティング担当者に読んでいただきたい図書
ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」は、この分野の研究で非常に重要な地位を占めています。彼の研究は、人々がどのように影響を受けやすいか、そしてそれがどのように行動に変換されるかを詳しく解説しています。
例えば、彼の提唱する「一貫性の原則」によれば、人々は自分が公言したことや過去の行動に一貫性を保つように努力します。これは、自己イメージの維持と社会的な期待に対する反応として説明されます。
この原則は、マーケティングや営業の現場だけでなく、日常生活や人間関係の中でも広く見られます。友人に対して約束をした場合、その約束を守ることで自己イメージを維持しようとする傾向がありのも、一貫性の原理に基づくものと考えて過言ではありません。
最後に
「コミットメントと一貫性」の原則は、マーケティングにおける成功の鍵です。イエスの連鎖を活用することで、個人が自らの決定に責任を持ち、約束した行動を継続する可能性が高まります。営業戦略からチャリティー活動、BtoBやBtoCマーケティングに至るまで、この原則を応用することで、組織は目標達成の確率を大きく向上させることができます。
チャルディーニの研究は、個人が一貫した自己イメージを保とうとする心理的傾向を明らかにしています。これはマーケティングに限らず、日常生活や人間関係にも深く根ざしています。BtoCマーケティングでは、希少性の原理が購買意欲を高めるために用いられます。限定版や数量限定のラベルは、消費者の興味を引き、アクションへと駆り立てます。
これらの心理的原則の理解と適用は、顧客とのより深い関係を築く上で上手に使いこなすべきです。組織・団体のマーケティング担当者は自社のマーケティング戦略にこれらの原則を取り入れ、顧客の心を掴む一歩を踏み出しましょう。