メールが届かない原因はドメインレピュテーション?改善策と防止方法を解説
メールマーケティングは、事業者がお客さまや見込み客とコミュニケーションを取るための強力な手段です。しかし、メールが受信者の受信ボックスに届かない場合、その効果は大幅に低下します。多くの場合、その原因は”ドメインレピュテーション“の低下にあります。
ドメインレピュテーションとは、
- インターネットサービスプロバイダ(ISP)
- Gmail・Yahoo!等のメール受信サービス事業者
が、メールの送信者の信頼性を評価する指標であり、スコアが低いと配信したメールが迷惑フォルダに振り分けられたり、受信拒否されたりする可能性が高くなります。
Gmailに届かない、Apple(iCloud.comなど)に届かない理由は、SPF・DKIM・DMARCの設定ただけでなく、ドメインのレピュテーションに問題があるのです。
ドメインレピュテーションが悪化するとメルマガキャンペーンのメールだけでなく、トランザクショナルメール(サンキューメール等)が届かなくなる理由と、その改善方法について確認してきたいと思います。
ドメインレピュテーションとは何か
ドメインレピュテーションは、メール送信者の信頼性を示す「健康状態」を表します。これはISPやメール受信サービス提供事業者である、
- Google(Gmail)
- Yahoo!JAPAN(ヤフーメール)
- Apple(iCloudメール)
によって決定され、メールが受信者の受信ボックスに届くか、迷惑メールフォルダに振り分けられるかを左右します。ドメインレピュテーションは、
- メールのエンゲージメント率(クリック数等)
- 迷惑メールの報告率
- バウンス率
- スパムトラップ
の存在など、さまざまな要因に基づいて評価されます。
ドメインレピュテーションを身近に感じていただくためには、メールマーケティングの信用スコアとして考えてください。
あなたが住宅ローンを借りるときのクレジットスコアのように、良いスコアを持つと信頼され、悪いスコアを持つと信用されないのです。
ドメインレピュテーションが高ければ、メールがスムーズに受信ボックスに届きやすくなる一方で、レピュテーションが低いと、迷惑メールフォルダに自動的に振り分けられたり、メールがブロックされることがあります。
ドメインレピュテーションがメールの配信に及ぼす影響
ドメインレピュテーションは、メールの配信成功率に大きな影響を与える重要な要素です。ドメインレピュテーションが低いドメインは、受信トレイへの到達率が低下します。
つまり、送信したメールが迷惑メールフォルダに振り分けられる可能性が高くなり、結果として受信トレイに届かなくなります。
受信トレイに届かないメールは開封される確率が低いため、メルマガを活用したマーケティングキャンペーンの効果も大幅に縮小します。
さらに、インターネットサービスプロバイダ(ISP)は、ドメインレピュテーションを基にして送信者のメールがスパムであるかどうかを判断するため、レピュテーションが低いドメインから送信されるメールは、より厳格なスパムフィルタリングの対象となります。
このような状況では、メールがスパムとして識別されやすくなり、結果としてメールの配信成功率がさらに低下します。
もちろんメールが迷惑メールフォルダに入ると、受信者がそのメールを確認する機会が大幅に減少します。
クリック率やコンバージョン率などの各エンゲージメント指標が低下し、メールマーケティングの費用対効果も低下してしまいます。
ドメインレピュテーションが悪化は、連鎖的な悪影響がメールマーケティング全体に及ぶため、注意深く管理することが求められます。
ドメインレピュテーションが悪化する5つの要因
ドメインレピュテーションが悪化する主な5つの要因を確認したいと思います。
1.ブラックリスト管理事業者に登録される
ドメインやIPアドレスがスパムハウス(Spamhaus)などのブラックリスト管理事業者に登録されると、そのレピュテーションは急激に低下します。
ブラックリストは、ISPなどが不正なメール送信者を特定し、その影響を最小限に抑えるための手段です。
ブラックリストに載る原因としては、受信者が大量にスパム報告をした場合や、ISPが埋め込むスパムトラップにメールを送信した場合が挙げられます。
ブラックリストに登録されると、メールの配信が大幅に制限されるか、ISPによって完全にブロックされることがあります。
このため、ブラックリストからの解除を目指すためには、メールクリーニングサービスの活用や、メール送信の運用改善を実践し、時間をかけてレピュテーションを回復する必要があります。
2.バウンスしないスパムトラップのメールアドレス
スパムトラップは、スパム送信者を特定するためにブラックリスト管理事業者やアンチスパム組織が設置した偽のメールアドレスです。
これらのアドレスは実際の人々には使用されておらず、公開されていないため、正当な手法で収集されることはありません。
また、Catch-All型のメールアドレスであることからバウンスせず、メールクリーニングサービスを通じてしか取り除くことはできません。
スパムトラップにメールを送信すると、そのドメインやIPアドレスは即座にスパム送信者とみなされ、レピュテーションが大幅に低下します。スパムトラップに引っかかる原因には、
- 古いリストを使用し続ける
- ウェブスクレイピングや購入リストの使用
- 不正なデータ収集手法
を用いることがあります。
このため、常に最新かつ有効なメールリストを維持し、ダブルオプトインなどの手続きを採用することが、スパムトラップを避けるためには重要です。詳しくは下記の記事をご覧ください。
3.低エンゲージメント
メールのエンゲージメント率が低い場合、ISPはそのドメインを「魅力のない・価値のない情報送信者」として評価します。
エンゲージメントとは、メールが開封されたり、リンクがクリックされたりすることで測定されるもので、これが低いと、ISPはその送信者のメールが受信者にとって有益ではないと判断します。
結果として、メールがスパムとして扱われるリスクが増加し、ドメインレピュテーションが悪化します。
3か月間、メールを開封しないユーザには配信しないほうが好ましいです。
また、高い購読停止率もネガティブなシグナルとしてISPに認識されます。メルマガ受信者が一度に大量に購読停止するような状況は、メールコンテンツの質や送信頻度に問題がある可能性を示唆します。
エンゲージメントを向上させるためには、関連性の高いパーソナライズされたコンテンツの提供が必要です。
4.メール送信量の不安定さ
短期間に大量のメールを送信する、あるいは送信頻度が不規則であると、ISPはその送信者をスパマーと見なす可能性が高まります。
特に、急激な送信量の増加は警戒され、ISPによって監視されることがよくあります。安定した送信量と頻度でメールを送信することは、信頼できる送信者であることを示すために重要です。
また、配信タイミングや送信リストのセグメンテーションを適切に管理することで、受信者にとって迷惑と感じられないようにすることも必要です。
計画的で戦略的なアプローチを採用することで、レピュテーションの維持が可能になります。
5.送信ドメインの年齢
新しいドメインは、既存のドメインよりも信頼性が低いと評価されることが多いです。
新しいドメインを使用してメールを送信する場合、ISPはそのドメインに対して慎重な姿勢を取ることが一般的です。
このため、まずIPウォームアップの期間を設け、少量のメールを慎重に送信することが推奨されます。いきなり大量のメール送信は必ず避けてください。
これは、徐々にメール送信量を増やし、安定したエンゲージメントを構築することを目的としています。
IPウォームアップ期間中は、最もアクティブで信頼できるメルマガ受信者にメールを送ることで、良好なレピュテーションを確立することが可能です。
適切なIPウォームアップを行うことで、新しいドメインでも高い信頼性を築くことができます。
ドメインレピュテーションの確認方法
ドメインレピュテーションを確認するためには、GoogleのPostmaster Tools(by gmail)を使うのが一番有効です。
Google Postmaster Toolsは、メール送信者が自身のドメインのレピュテーションやメールの配信状況を監視・分析するためGoogleが提供している無料ツールです。
主に、メールマーケティングを行う事業者が、自分たちの送信したメールがGmailユーザーにどのように受け入れられているかを確認するために使用されます。Google Postmaster Toolsを使用することで、
- ドメインレピュテーション
- IPレピュテーション
- 迷惑メール率
- 暗号化の使用状況
- なりすまし対策の状況
など、メール配信に関する重要な指標をリアルタイムで把握することが可能です。
このツールの主要機能の一つは、ドメインレピュテーションの評価です。あなたのドメインがGoogleの基準に基づいて”良好”・”低い”・”不明”などのカテゴリーに分類され、どの程度信頼されているかを示します。
高いレピュテーションを持つドメインは、メールがスムーズに受信ボックスに届く可能性が高く、低いレピュテーションのドメインは迷惑メールフォルダに振り分けられるリスクが高まります。
また、迷惑率のレポートも提供されており、Gmailユーザーからスパムとしてマークされたメールの割合を確認できます。
これは、2023年10月にGoogleが更新した送信者ガイドラインで求められている迷惑メール率0.3%以下を達成できているか監視のためにも必要です。
Google Postmaster Toolsの利用はお名前ドットコムなどのDNSサーバーにTXTレコードを追加することで簡単に実現できます。
ドメインレピュテーションを改善するための対策
Google Postmaster Toolsでドメインレピュテーションがよくないと確認できたとき、次のような対策を打つ必要があります。
送信可能リストのクリーニング
保有メールリストのクリーニングは、近年メールマーケティング戦略の中で最も重要かつ不可欠なステップの一つです。
最低でも年に2度はメールリストのクリーニングを行い、Catch-allメールアドレスや無効なメールアドレス、長期間にわたり非アクティブなメール受信者を削除することで、メール送信の効率を高めることができます。
届かない、使われていないメールアドレスを削除することで、ブラックリスト管理事業者が仕掛けてくるスパムトラップに引っかかるリスクを減らし、バウンス率を低減させることができます。
真に有益な配信対象者だけにメールを送信することで、メールの開封率やクリック率が向上し、全体的なエンゲージメントも向上します。
必ず実施!ドメインレピュテーション管理に必要な3つの行動
ドメインレピュテーションを長期的に維持するためには、いくつかの重要なベストプラクティスを遵守することが不可欠です。
(1) 定期的にドメインレピュテーションを監視する
ドメインレピュテーションは時間の経過とともに変動するため、GoogleのPostmaster Toolsなどを使った継続的な監視が必要です。問題が発生したときは、迅速に対応することが求められます。
例えば、急激に迷惑メール報告が増えた場合や、メールの開封率が大幅に下がった場合は、早期に原因を特定し、改善策を講じることが重要です。問題を放置すると、ドメインレピュテーションがさらに悪化し、回復が困難になることもあります。
(2) メールリストの品質管理
適切なメールリスト管理を行い、非アクティブなメール受信者を抑制することが重要です。
昨今は3か月間メールを開封していない受信者やエンゲージメントが低い受信者をリストから除外することで、迷惑メール報告のリスクを減少させることができます。
メールリストの質を保つために、ダブルオプトインなどの手続きを導入し、新規メール受信者の品質を確保することも効果的です。
定期的にリストをクリーンアップすることは、メールの到達率を向上させ、ドメインレピュテーションの維持に寄与します。
当社が提供している、メールクリーニングサービスをご利用ください。
(3) メールの内容と送信スケジュールの最適化
受信者の行動に基づいてメールの内容をパーソナライズし、関連性の高い情報を提供することで、エンゲージメントを高めることができます。
送信スケジュールも、受信者の活動時間に合わせて最適化することで、開封率とクリック率の向上が期待できます。
無計画に大量のメールを送信するのではなく、ターゲットを絞った戦略的なアプローチが求められます。このようにして、受信者との信頼関係を築き、ドメインレピュテーションの向上につなげることができます。
ドメインレピュテーションを長期的に維持するためには、
- 継続的な監視
- 適切なメールリスト管理
- 戦略的なメール送信
が欠かせません。これらのベストプラクティスを遵守することで、メールマーケティングの効果を最大化し、長期的な成功を収めることが可能になります。
最後に
ドメインレピュテーションは、メールマーケティングの成功に不可欠な要素です。適切な監視と改善を行うことで、ドメインレピュテーションを高め、メールの配信成功率を向上させることができます。
今回ご紹介した方法を実践することで、より効果的なメールマーケティングキャンペーンを展開し、コンバージョン率とエンゲージメントを最大化することができるでしょう。