メールマーケティングに教科書は存在しない

アメリカ大統領選挙は 新しいメソッドと出会える

4年に1度、マーケターにとって究極の学びの場がある。最高峰のマーケティング戦略と戦術がぶつかり合う、アメリカ大統領選挙だ。アメリカ大統領選挙を戦っていくための資金となる寄付金を市民から募る取り組みである。

この戦いでは、一つ一つ必ず意味がある成果物が使われる。服・ネクタイ。シャツの腕まくり。写真画像の背景から人の目線。ここまでやるのかと言うぐらい徹底した成果物で、人に行動を促す。各党の候補者が使っているWEBサイトのカラーコード。これらも全て心理学的な理論に基づいたカラーコードが使われる。

アメリカ大統領選挙におけるメルマガは、支持者へ寄付を依頼し、政策を訴えかける手段として多用される。選挙終了後、マーケティング手段の1つとして研究対象となる。斬新的な件名(Subject line)の工夫事例は参考になるはずだ。

オバマ元大統領が多用していた“hey”や”SO”という件名、”:”コロンを使った件名は非常にパワフルな件名だったと評価されている。

人に行動を促すため、いったいどのような工夫をするのか。この究極の学びの場を活用して、日本のメールマーケティングにも適用できるか試してみるのだ。好意を抱いている相手にラブレターを送るときの封筒への工夫だと思って欲しい。シンプルに絵文字を入れる。これだけでも、封筒を開く確率(開封率)が上がり、最終的なコンバージョン数は上がるのだ。

選挙が終わったあとに、様々な研究・分析がなされるアメリカ大統領選挙のマーケティング。国内のマーケティング記事に目をやるだけでなく、世界の最高峰の戦いには、メールマーケティングにおける成功のヒントが眠っているのだ。

まずは真似だ。真似をすることから始めるのだ。そして、独自のテーストを加えるのだ。


書籍「ザ・ローンチ」との出会い

デジタルマーケティングが盛んになるなか、日本人が執筆したメールマーケティングに関する有益な書籍は書店の棚に見当たらない。日本国内に存在しないと言っても過言でない。ただ、1冊。アメリカ人のJeff Walkerの「Launch(※和訳されネ「ザ・ローンチ」として販売されている)」だけは参考になるはずだ。

プリモポストの代表者が、独自で築き上げてきたメールマーケティングのメソッドが固まりつつあった時期に出会った1冊である。自身の成功体験と、書籍に書かれていることが一致したのだ。この書籍の中に「プロセスが大切なのだ」というくだりがある。まさに、代表者が最も大切であると考えていたマインドだった。

1通のメールで、成果を出そうとしても、思い通りにはいかない。だから、段取りが必要なのだ。お客さまとの関係性を構築する必要があるのだ。人間の脳を改めて考えて欲しい。脳は忙しい。急なオファーレターを読む時間はないのだ。

Jeff Walkerは”prelaunch(プレ・ローンチ)”という表現をしているが、まさに段取りのことを言っている。プリモポストの代表者が実現した驚異的な成功事例においても、事前の段取りが全てであったと言っても過言ではない。1通メールからコンバージョン出すためには、それなりの段取りが必要ということは、全世界共通なのだ。


世の中にある定点観測 の数値を見続ける

マーケターはいかなる時も、定点観測できる数字の動きを見続ける必要がある。人の動きを理解しなくてはならない。天候やイベントごとで、WEBから人が消える時間がある。相関関係さえ身に着ければ、数字の落ち込みは怖くはない。その落ち込みは単なる引潮であり、大きな波となって戻ってくる可能性があるからだ。

人々が天候やイベントでどのような動きをするかよく見て欲しい。東日本大震災が起きたとき、WEB上で各地域の人々の動きがどうだったか確認して欲しい。マーケターの常識を覆すような結果がインプットされると思う。見える世界が広がれば、打てる手も変わってくる。

マーケティング活動は時間の奪い合いである。いつ、メッセージを届けたらいいのか。最良のタイミングがあるのだ。そのためにも、数字を必ず見て的確な判断ができる要になる必要がある。

あるアウトバウンドを行っている大手コールセンターの方が、「台風が迫っている地域へのアウトバウンドは効果的」と言っていた。この一言が言わんとしている本質を理解する必要があるのだ。


メンタルトリガーを 最後のピースにする

WEBマーケティング全般的なメソッドに通じる話だが、人を動かす要素がいくつかある。気持ちを着火させるためのトリガーである。Jeff Walkerが紹介している9つのトリガーを紹介しておこう。

権威

コロナ渦における専門家の情報発信が分かりやすいであろう。どのような肩書の専門家が、どのような情報を発信しているのか。肩書は大きな影響を与えるのである。

「東京大学の〇〇教授、京都大学の〇〇教授、ノーベル賞受賞の〇〇さん」という肩書の方が発せられる言葉は信じたくなる。これこそ“権威”がもつ力だ。

返報性の原理

「無料(ただ)ほど高いものは無いと」いう言葉がある。まさにそうだ。なぜならば、返報性の原理を働かせる土壌ができるのだ。

価値がある“情報”や“財物”を得た時、人間は感謝の念をいただく。その感謝の念に対して、お返しをしなくてはならないという気持ちがわくのが人間なのだ。日本語でいう「お世話になったから〇〇をする」というくだりが分かりやすいだろう。

信頼

お客さまとの信頼関係を築こう。そうすれば、マーケターが発信する情報に基づいて行動する確度と頻度が上がってくるはずだ。

これは、幼稚園や保育園で一緒に子育てを行った家族の関係が一番わかりやすいであろう。人生を豊かに過ごしていくために、有益な情報を交換したり、時間をともに過ごすことで、幼子の面倒をお互いにお願いすることができる関係を築き上げた方も多いのではないか。あなたの弱みをさらしだし、双方の弱みを補い合いながら築いていくものである。

期待

サンタクロースが家にやってきてくれる日を楽しみに待っていたあの日。サンタクロースへの手紙とクッキーがなくなり、期待とともにその日を待つことを誰もが経験したことがあるだろう。プレゼントがもらえる期待感だ。

サンタクロースからのプレゼントをもらうため、どれだけ親の指示に従い行動しただろうか。1年に1度しか機会がない、その貴重な日のために、期待感をもってたくさんの時間と労力を費やしたはずだ。

好感度

「よく目にするから」、「商品の見た目が良いから」、「店員さんの発せられる声が心地よいから」。ビジネスをするうえにおいて、”好き嫌い”は購買に大きな影響を与える要素である。

マーケターがお客さまに対して”好感度”をあげていくためには、強みや弱みを伝えることができる人間味がある情報を発信し、お客さまの声に耳を傾け、お客さまが困っているときは、寄り添い問題解決の支援をすることを心掛ける必要があるのだ。

イベントや儀式

人が集まっていると、何をしているのか見たくなる。行列があると並びたくなる。店頭販売がわかりやすい事例だ。

人は本能的に人が集まっているところに心を取られてしまう。もしかすると、生活が豊かになる情報があるのではないかと考えるからだ。会場の空気を参加者全員で共有し、儀式的に情報を発していく。マーケターが数字を稼ぐセミナー講師のセミナーに参加すれば、その意味が見えてくるだろう。

コミュニティ

住んでいる地域や属している組織に従って、人は行動を取る。だから、自社コミュニティを形成する必要があるのだ。

〇〇会員というコミュニティに属していると認識させ、コミュニケーションを取るのだ。中学の仲間、高校の仲間、大学の仲間、元同僚。同じである。このようなコミュニティを作り上げていくのだ。

希少性

手に入れられにくいものほど、その商品やサービスに価値を感じ、手にしてみたくなる。人間の心理というものだ。ダイアモンドが、身近な川から簡単に取れれば誰も対価を支払ってまで手にしたいものではなくなる。”物”も”情報”も有益かつ希少性があれば、人を動かすトリガーとなりえるのだ。

社会的信用

お客さまの声(VOC)を集め、商品やサービスとともに内容に対する真摯な取組を公開することで売上は劇的に変化するであろう。商品やサービスを通じ、どのような価値を授受しあったのか。社会からの評価を赤裸々に公開することで、未来に対する信用を得ることができる。

お客さまにとって、初めての取引ほど不安なことはない。失敗したくないのだ。だからこそ、社会的に認められている存在であることを示す必要性がある。