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新規ドメインは“即利用NG”?Spamhausが教える信頼されるドメインの育て方

2025.04.13
日吉 浩之のプロフィール写真

株式会社プリモポスト 取締役

日吉 浩之 メール到達エバンジェリスト

新しく取得したばかりのドメインで、たった数十通メールを送っただけなのに「Spamhaus(スパムハウス)のスパムリストに載ってしまった」。そんな信じられないような事例を実際に体験中です。しかも、メールの内容は普通の連絡。

なぜこれほど厳しくフィルターされてしまうのでしょうか?その背景には「新規ドメイン」特有のリスクと、メールセキュリティ業界の警戒体制の強化があります。

Spamhausをはじめとするグローバルなブラックリスト管理事業者は、悪質な迷惑メール送信者が使い捨てドメインを大量に使う傾向を把握しており、「年齢が若いドメイン」=「まず疑ってかかる対象」として扱っているのです。

今回は、Spamhausが公開している「新規登録ドメインのベストプラクティス(Part 3)」をもとに、どのようにして信頼されるドメインを育てていくべきか、その基本方針をわかりやすく解説します。

たとえ配信数が少なくても、最初の運用ミスが“ブラックリスト入り”の引き金になってしまうことを知っておきましょう。

なぜ新規ドメインはこんなに警戒されるのか?

新規に登録されたばかりのドメインは、サイバーセキュリティの観点から「最も疑われやすい存在」として扱われます。

その理由は、悪意ある送信者が迷惑メールやフィッシング詐欺を行う際に、新しいドメインを“使い捨て”のように乱用するケースが非常に多いためです。

こうした攻撃者は、短期間で多数のドメインを取得し、しばらくメールやウェブサイトを使ってから、ブラックリスト入りする前に次のドメインに乗り換えるという「ローリング戦略」を取ります。

この手法は一見巧妙ですが、Spamhausなどのブラックリスト管理事業者は、こうした振る舞いのパターンをデータとして蓄積・共有しています。

その結果、

  • メールサービスプロバイダー
  • ウイルス対策ソフト
  • ブラウザのセキュリティ機能

など、多くの検知システムが「登録から日が浅いドメイン」を自動的に“要注意リスト”に入れて監視します。ドメイン年齢が若いというだけで、配信数が少なくてもブロック対象になる可能性があるのです。

このような背景から、新しいドメインを取得した場合は、信頼を積み上げるために慎重な運用が求められます。

なりすまし対策(SPF・DKIM・DMARC)の整備はもちろん、いきなり大量配信せず、知り合いや社内でも構いません。1日10通以下の小規模で静かな運用から始め、時間をかけて“信頼スコア”を高めていく姿勢が重要です。

Spamhausは日本のサーバーが広く使っているアンチスパムエンジンの1つであるスパムアサシンがスコアを計算するときに使われています。放置しておくと、さくらインターネットやXserverの方にメールが届かなくなるのです。

Spamhausが推奨する「5つの運用ガイドライン」

新規ドメインは、運用の初動で間違った対応をすると、一気に信頼を失い、迷惑メール扱いされるリスクが高まります。特にSpamhausのような世界で展開するブラックリスト管理事業者は、新規ドメインの挙動に非常に敏感です。

そのため、次の5つのガイドラインを守ることが、安全かつ信頼されるドメイン運用の出発点となります。

(1) ドメイン取得直後は使わない

最も重要なのが「取得したドメインをすぐに使わない」こと。

多くの人がドメイン取得後、すぐにウェブサイトを公開したり、メール配信を始めたりしがちですが、それは非常に危険な行為です。

新規ドメインは、セキュリティ上の観点から「疑われやすい時期」にあります。この段階で活動を始めると、「怪しい動き」とみなされ、Spamhausや各種スパムフィルタに自動検出されるリスクが高まります。

取得後は2〜4週間ほど「ウォームアップ期間」として、DNS設定やメール認証の整備だけを行い、実際の運用は控えてください。

当社のドメインウォームアップサービスをご利用ください。

(2) セキュリティ設定は初期段階で完了させる

新規ドメインにおいては、SPF・DKIM・DMARCの設定が欠かせません。これらは、ドメインを使って送信されるメールが正規のものであることを証明するための技術です。

  • SPF(Sender Policy Framework):自社のドメインからメールを送信するサーバーのIPアドレスをDNSサーバーに明示
  • DKIM(DomainKeys Identified Mail):送信メールに電子署名を付けて改ざんを防止
  • DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting & Conformance):SPFとDKIMの認証失敗時の処理方針を3段階で定義

これらを適切に設定することで、なりすましによる悪用を防ぐだけでなく、メールの信頼性を高め、受信側でのスパムフィルタの通過率も改善されます。

(3) レピュテーションを定期的にチェック

ドメインの信頼性(レピュテーション)は、時間の経過とともに評価されていきます。しかし、何らかの問題や誤検出によって急に悪化することもあるため、定期的なモニタリングが必須です。

Spamhausの「Domain Reputation Checker」や、Google Postmaster Tools、Talos Intelligenceなどのツールを活用して、ドメインの健全性を日常的にチェックしましょう。

もし早い段階で異常を検知できれば、ブラックリスト入りやメールの到達率低下を未然に防ぐことができます。

(4) サブドメインの運用にも注意

本ドメインの管理だけでなく、サブドメインも同様に注意深く管理する必要があります。よくある失敗例として、設定だけして運用していないサブドメインが放置され、外部からの不正利用(サブドメインテイクオーバー)に遭うケースがあります。

また、レベル1のサブドメインは本ドメインと運命共同体となります。用途ごとにサブドメインを分けることは有効ですが、各サブドメインに対してもSPFやDKIMなどの設定を怠らないようにしましょう。

もし、影響を受けたくないのであれば、レベル2のサブドメインで運用をしてください。

(5) 信頼できるレジストラを選ぶ

最後に見落とされがちなのが「ドメイン登録業者(レジストラ)」の選定です。価格の安さだけで選ぶと、セキュリティ体制が不十分な業者に当たる可能性があります。

  • Whois情報のプライバシー保護
  • DNSSEC(DNSセキュリティ拡張)対応
  • 2段階認証(2FA)の提供
  • サポート体制の充実

これらの項目を満たしているかどうかをチェックして、信頼できる業者と契約することが、安全なドメイン運用の前提条件です。

最後に..。ドメインは「育ててこそ資産」になる

ドメインは単なる「アドレス」ではありません。ブランドの信頼を支える“デジタル資産”です。

とくにメール運用においては、ドメインの信頼性がそのまま配信の到達率に直結し、ひいてはお客さまとの関係性やビジネス成果にも大きな影響を与えます。

よく整備され、正しく運用されているドメインは、迷惑メールフィルターをすり抜ける力だけでなく、受信者に安心感を与える「見えない信用」を備えています。

一方で、初動の設定や配信方法を誤れば、わずか数通のメールで信頼を損ない、迷惑フォルダ入りという不名誉なレッテルを貼られてしまうことも。

大切なのは、急がず・焦らず、慎重に運用をスタートすること。時間をかけて「信頼されるドメイン」を育てていくことで、その価値は年々増していきます。

Spamhaus社が推奨するベストプラクティスに沿った適切な対応こそが、将来にわたる資産価値を守る最良の道といえるでしょう。

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