2024年10月に日本の大企業が平気でおちいったメール配信の罠とは
来たる2025年。メール配信の成功は単に技術力やマーケティングの知識だけでは測れない時代になっています。
特に、ドメイン取得してから運用時間が短いドメインでのメール配信は、その取り扱いを間違えると、簡単に迷惑メールフォルダ行きという大きな問題を引き起こします。こうした問題は、大企業でも見られるのです。
2024年10月、ある大手企業が社名変更を機に新しいドメインを取得し運用を開始しました。
情報収集が不十分だった
- システム担当者
- マーケティング担当者
は、送信IPアドレスの変更がなければウォームアップは不要と判断し一斉送信メールを送信しました。しかし、これが大きな間違いだったのです😢。
ウォームアップを送信用のIPアドレスに限定し、ドメイン自体の評価を高めるプロセスを全く考慮しなかった結果、配信したメールの多くがお客さまの迷惑メールフォルダに振り分けられる事態に陥りました。
お客さまが大切なメールを目にしないことで、伝えたかった情報が届かないだけでなく、企業のブランドイメージにも悪影響を与えました。さらに、トランザクションメール(例:サンキューメールやパスワードリセットなど)も正常に届かなくなるリスクを高めたのです。
日本ではまだ重要視されていないドメインウォームアップを軽視すると、メールの到達率が低下し、売上に深刻な影響を及ぼします。新しいドメインを使用する際、適切なプロセスを取らずに配信を始めることで、あなたの組織でも同様の問題に直面する可能性があります。
「あなたの組織では、新しいドメインでのメール配信を正しく計画されています?」
今回は当社が実際に目の当たりにした、大企業でも陥る「メール配信の罠」とその解決策について解説します。
そもそもメールドメインウォームアップとは?
メールドメインウォームアップとは、新しいドメインを使用してメール配信を開始する際、そのドメインの「信頼性」を徐々に高めるためのプロセスです。
ドメインウォームアップを適切に行うことで、 ISP(インターネットサービスプロバイダー) ならびに ESP(Eメールサービスプロバイダー) から信頼される送信者として認識され、配信成功率を向上させることができます。
ドメインウォームアップの基本的な役割
ISPやESPは、メールの送信者を評価するために、様々な要因をチェックします。その中でも大切なのがSEOでお馴染みの”ドメイン評価“です。Googleやスパムハウス社が提供するサービスでドメイン評価を確認できます。
送信用のドメイン評価が低い場合、次のようなことが発生します。
(1) 迷惑メールフォルダ行き
ISPは信頼性が低いと判断したドメインからのメールを、迷惑メールフォルダに振り分け。
(2) 配信不能(バウンス)
ドメインの評価が低いと、送信先サーバーがメールを拒否。
(3) ブランドへの悪影響
お客さまへ大切な情報を届けられないことで、ビジネスの信頼性が低下。
ドメインウォームアップの目的は、段階的にメール配信を行い、ドメインの信頼性を構築することにあります。この信頼性を築くことで、メールの到達率が向上し、配信失敗のリスクが大幅に減少します。
日本国内の大手企業の事例に学ぶ「見過ごされたリスク」
日本国内の大手企業の事例では、社名変更前の送信IPアドレスを使うことから、IPアドレスのウォームアップは十分に実施されていましたが、ドメイン自体の評価を高める手順は完全に省略されていました。
- 信頼性が低い評価された:新しいドメインがISPによって”信頼性が低い”と評価されました。ドメインの歴史が短いことや、送信パターンが不自然であるから。
- 迷惑メールフォルダ行き:配信されたメールの多くが迷惑フォルダに振り分けられ、お客さまに情報が届かなかった。
- 配信目的が達成できず取組が失敗:配信の大失敗によって、お客さまへの情報提供が遅れ、計画していた取組のスケジュールが大幅にずれた。
ドメインウォームアップがの大切さに対する意識が完全に抜けていたのです。
【社名変更前のスパムハウス社によるドメインスコア】
【社名変更後のスパムハウス社によるドメインスコア】
使われて間もないドメインのスコアは2と、慎重な運用が求められる状況となっています。マイナスになると、高確率でメールが届かなくなります。
メールもAIによるフィルタリング技術の進化中
ISPは、AIを活用した高度なフィルタリング技術を導入しており、メールの配信成功率はこれまで以上にドメインの信頼性に依存するようになっています。
この進化により、ISPは従来の単純なスパムフィルターから、複雑で多層的な評価システムへと変化しました。AIは、メール配信に関するさまざまな要素を分析し、それが自然かつ適切なものであるかどうかを判定しています。
AIは送信パターンに注目します。毎日の送信量が一貫しているか、増加のペースが急激でないかを確認することで、不自然な挙動を排除します。
例えば、突然大量のメールを送信すると、ISPはこれを疑わしい行動とみなし、ドメインの信頼性を大きく損なう可能性があります。一方、安定した送信パターンは、正当な送信者であることを証明する重要な要素です。
次に、AIは開封率やクリック率などのエンゲージメント率も分析できます。受信者のエンゲージメントが低い場合、ISPはそのメールを不要なものと判断し、スパムフォルダに振り分ける可能性が高まります。
適切な配信ターゲットリストを選び、受信者との積極的なやり取りを促進することが重要です。
さらに、SPF、DKIM、DMARCといった技術的なメール認証が正確に設定されているかどうかを確認し、不備があれば即座に評価が下がります。
これらの認証は、メールが正当な送信者から送られていることを証明する役割を果たしており、適切な設定がなされていないと、ISPがそのメールを疑わしいものとみなす可能性が高くなります。
これらの要素を踏まえると、適切なドメインウォームアップは、メール配信の成否を左右する重要なステップであることが明白です。
特に、AIが進化し、ISPの評価基準が一層厳格化する2025年においては、このプロセスがますます重要性を増しています。前述の10月の事例は、ドメインウォームアップを怠ることでどれほど深刻なリスクが生じるかを示す象徴的な例です。
適切なドメインウォームアップの手順
ドメインウォームアップは、新しいドメインを使用する際に信頼性を確立し、配信成功率を高めるための重要なプロセスです。このセクションでは、具体的な手順と実践的なアプローチを詳しく解説します。
なりすまし対策である認証の設定(SPF、DKIM、DMARC)
ドメインウォームアップを始める前に、最初に行うべきはなりすまし対策であるメール認証の設定です。認証が正しく設定されていない場合、ISPは送信元の信頼性を疑い、迷惑メールフォルダに振り分ける可能性が極めて高くなります。
- SPF(Sender Policy Framework):ドメインからメールを送信できるサーバーを指定する仕組み。正しく設定されていないと、Gmailなどは届かない可能性が大
- DKIM(DomainKeys Identified Mail):メールにデジタル署名を付与して文章の改ざんを防止
- DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting, and Conformance):SPFとDKIMの結果に基づいてISPにメールの処理方法を指示します。DMARCポリシーが”p=reject」”がGoal
送信量を段階的に増加
新しいドメインでは、送信量を急激に増やすとISPが不自然な送信パターンとみなし、信頼性を下げる可能性があります。送信量は段階的に増やし、安定した送信パターンを維持することが重要です。
【1週目】 1日50〜100通程度から開始
高エンゲージメントなユーザーリストを使用し、配信先の反応をモニタリングする。
【2から3週目】 送信量を20〜50%ずつ増加
この段階でバウンス率や迷惑メールを継続的にチェックする。
【4週目以降】 通常の送信量に到達
突発的な送信量の急増を避け、安定した配信を心がける。
送信量は段階的に増やすことで、ISPに自然な送信パターンを示し、ドメインの信頼性を高めることができます。
最初のウォームアップ段階では、過去6ヶ月以内にメールを開封または返信した受信者を含むリストを使用してください。メールのエンゲージメント率がドメイン評価に直接影響するからです。
また、ウォームアップ段階では、メールの内容も慎重に設計する必要があります。ISPは送信されたメールの内容を分析し、不自然な言葉やフォーマットが含まれると迷惑メールとして判断する可能性があります。
「先日はお問い合わせいただき、ありがとうございました。何かご不明点があればいつでもご連絡ください。」
などと、短くて簡潔な内容で、受信者が返信しやすい形式を心がける。また、「無料」「割引」「特別限定」など、スパムと判断されやすい単語を使用しないでください。
ウォームアップサービスの利用
ウォームアップを効率的に進めるためには、専用のサービスを活用するのも手です。プリモポストは、ドメインのウォームアップサービスも提供しておりますのでご希望のかたは直接お問い合わせください。
ドメインウォームアップは長期的に必要
ドメインウォームアップは、新しいドメインでメール配信を開始する際だけでなく、継続的なプロセスとして取り組むべき重要な課題です。一度信頼性を獲得しても、維持するためには継続的なモニタリングと対策が必要です。
ブラックリスト監視
ドメインがスパム行為に関連付けられていないかを定期的に確認する必要があります。ブラックリストに登録されると、メールが届かなくなるだけでなく、信頼性の回復に多大な時間とコストがかかります。
プリモポストのブラックリスト監視サービスで、送信IPとドメインがブラックリストに掲載されていないか双方を監視することができます。
送信可能リストから害虫のようなアドレスを駆除
メールリストは時間とともに劣化します。1年に1度はメールクリーニングサービスを活用し、害虫のようなメアドを送信リストから削除することで、高い配信成功率を維持します。
送信スケジュールの一貫性
メール送信量やタイミングが不規則になると、ISPは迷惑メールでないかと疑念を抱き、配信失敗につながる可能性があります。安定したスケジュールを保つことがポイントです。
最後に
日本国内の大手企業の事例では、適切なウォームアップが行われなかった結果、お客さまはもちろん。ISPからの信頼性を回復するために時間とお金を要することになります。
さらに、ブラックリストに掲載されていれば解除の手続きに数週間を費やし、お客さまの信頼を取り戻すために追加の対策を実施する必要があり、さらにエンゲージメント率の改善には段階的なリスト再構築が求められました。
まさに、後ろ向きの作業です。
このような事態を防ぐには、ドメインウォームアップを単なる一時的な作業と捉えるのではなく、長期的なプロセスとして計画的に実施ください。定期的なモニタリングとメンテナンスを欠かさず行い、問題を未然に防ぐ取り組みを継続することが、配信の信頼性を維持する上で不可欠です。