選択肢のパラドックス。人は選択が多ければ多いほど不幸になる?
日本で松竹梅の選択を用意しておけば、最終的に真ん中を選ぶ。ビジネスにおいても、そのような話はよく耳にしますよね。長い間、この心理をひも解く研究はさまざまところで行われてきました。
スマホやユニクロの商品の色は数が多い方がいい。選択の自由は我々をより自由にすると言われてきましたが本当にそうでしょうか?心理学者バリー・シュワルツがTED Talkで示した「選択肢のパラドックス」は、その考えをくつがえすものでした1。彼は、選択肢が多いほど人は迷いや後悔が生じやすく、結果的に不幸を感じやすくなると説明しました。また、次のジャムの購買による実験でも選択肢の多さは必ずしも期待通りの成果につながらないと説明しています。
選択肢が多いと購入できない – ジャムの法則 –
この選択肢のパラドックスについて具体的な事例として、スタンフォード大学のシーナ・アイエンガー教授が行った「ジャムの法則」2の研究があります。NHKのEテレの番組でも放送された有名な事例です。彼女は高級スーパーマーケットで24種類のジャムと6種類のジャムを試食させる2つのブースを設置しました。
来店者の60%が24種類のジャムのブースに立ち寄ったものの、実際にジャムを購入したのはそのうちの3%だけでした。一方、6種類のジャムのブースには来店者の40%が立ち寄り、そのうちの30%がジャムを購入しました。つまり、選択肢が多すぎると、人々は選択するのが面倒くさくなり、結局何も選ばないという選択をする可能性が高る結果をました。
Netflixの例
ビジネスの世界でも、選択肢のパラドックスは現れます。ストリーミングサービスのNetflixは膨大な数の映画やテレビ番組を提供していますが、選択肢が多すぎて視聴者は何を観るか決めるのに時間をかけすぎ、結果として何も観ずに時間を浪費してしまうという現象が起きています3。これを解決するために、NetflixはAIを利用した推薦アルゴリズムを開発し、ユーザーの視聴履歴や評価を基に個々のユーザーに合ったコンテンツを推薦することで、選択肢を絞り込んでいます4。
ビジネスにおける選択肢のパラドックスの対策
選択肢のパラドックスを理解し、それをビジネス戦略に反映させることで、BtoBやBtoCの担当者は顧客満足度を向上させ、売上を増加させることができます。選択肢の提供方法について考えるべきことを整理してみたいと思います。
適切な選択肢の数を提供する
選択肢が多すぎると顧客は選択を避ける傾向があります。適切な数の選択肢を提供することで、顧客の決定を促し、購入や契約につなげることができます。
顧客に合わせたカスタマイズ
AIや他のテクノロジーを利用して、顧客の個々のニーズや好みに応じた選択肢を提供することが有効です。これにより、顧客は自分に合った選択肢を見つけやすくなります。
選択を簡単にする
選択を下すのが難しいと感じる顧客は、購入や契約を避ける傾向があります。そのため、選択肢を明確にし、比較や評価を容易にすることが重要です。
顧客の決断をサポートする
情報を提供し、質問に答えるなどして、顧客が自信を持って選択できるように支援します。これにより、顧客は自分の決断に満足し、後悔する可能性を減らすことができます。
一定期間ごとに選択肢を見直す
市場の動向、顧客のニーズ、競合状況などを考慮に入れて、定期的に選択肢を見直すことが重要です。
選択肢のパラドックスは、我々が選択肢を提供する方法を再考する機会を提供します。ジャパネットたかたがECサイトで取り扱う商品を大幅に減らしたことも有名な話です。適切な数と種類の選択肢を提供することで、顧客は自分に最適な選択をしやすくなり、満足度を高めることができるはずです。。