一貫性の原理をBtoBマーケティングに活用する
一貫性の原理は、私たちが日常で行う判断や決定に影響を与える概念です。我々が同じ状況に再び直面したときに、前回と同じ方法で対処する傾向があります。これは、新しい状況ごとに都度異なるアプローチを考えるのはエネルギーを消耗するため、楽をしたがる脳にとって効率的な決断になります。
具体的にどのようなものかイメージしていただくため、犯罪集団が一貫性の法則を悪用例を確認したいと思います。
フット・イン・ザ・ドア(FITD)テクニック
犯罪者は、対象者に小さな依頼を行い、その後でより大きな依頼を行います。このテクニックは、人々が一度「はい」と言った後には、それに一貫して行動する傾向があるという一貫性の原理に基づいています。例えば、犯罪者はまず対象者に無害そうな情報(例えば電話番号)を聞くことから始め、次により重要な情報(例えば銀行口座の詳細)を聞くようになるかもしれません。
詐欺
犯罪者は初期の段階で対象者に何らかの承諾を求め、その後で対象者がその初期承諾に一貫して行動するように仕向けます。例えば、犯罪者は対象者に投資の機会を提示し、小額の投資を行うように促します。その後、犯罪者は対象者が初めての投資に一貫して行動するように、さらに大きな投資を求めるかもしれません。
マルチ商法
マルチ商法やネットワークビジネスでは、参加者に対して小額の投資を促し、その後でより大きな投資を求めることがあります。これは一貫性の原理を利用したもので、一度小額の投資を行った参加者は、さらなる投資を行うことで初めての投資に一貫した行動を取ると感じる可能性があります。
これらの例からわかるように、犯罪集団は一貫性の原理を悪用して対象者を不適切な行動に誘導することがあります。このような詐欺から身を守るためには、自分が何に同意しているのか、そしてその後の行動がその同意に一貫しているかどうかを常に確認することが重要です。
我々の生活の身近なところに、このような一貫性の法則が使われています。
ビジネスの世界、特にBtoBマーケティングにおいても、一貫性の原理は極めて重要で無意識に活用されています。顧客は一貫性を持ったブランドやサービスを好むため、企業はこれを武器に顧客信頼を築くことができます。例えば、顧客が製品の品質やサービスの提供レベルに一貫性を感じると、そのブランドに対する信頼感が高まり、リピート購入や長期的な取引関係の確立が期待できます。
既存顧客へのアプローチの深堀り
既存顧客は企業の製品やサービスの価値を理解しており、その期待を裏切らない一貫したサービスが求められます。新製品の導入やサービスの改善時にも、ブランドの特徴や価値を一貫して伝えることで、顧客の混乱や不信感を避けることができます。また、一貫性を持ったコミュニケーションを続けることで、顧客との関係をより深化させることができます。
未取引顧客へのアプローチの深堀り
未取引の顧客に対しては、ブランドや製品の魅力を効果的に伝えるための一貫性が求められます。特に、彼らは企業の製品やサービスに対する先入観がないため、明確で一貫したブランドメッセージが非常に重要です。さらに、効果的なマーケティング戦略や広告キャンペーンを展開し、ブランドの認知度を高めることで、初の取引につなげることができます。
具体的なBtoBの事例の詳細
IBM
Watson」のAIプラットフォームを中心に、AI技術の先進性と一貫性を持ったメッセージングを展開。これにより、テクノロジー企業としてのリーダーシップを強化しています。
Maersk
グローバルな物流サービスを提供する中で、ソーシャルメディアでのストーリーテリングを一貫して行い、ブランドの認知度を向上させています。
GE
産業製品の提供者として、一貫したブランドイメージを保ちつつ、デジタルトランスフォーメーションを進める姿勢を強調しています。
Slack
チームコミュニケーションツールとして、シンプルで一貫したユーザー体験を提供することで、多くの企業に導入されています。
Salesforce
CRMツールのリーダーとして、一貫性と革新性を兼ね備えたサービスを提供し続けています。
最後に
一貫性の原理は、BtoBマーケティングにおいて非常に有効な戦略です。しかし、ターゲットとなる顧客のタイプやニーズに応じて、そのアプローチを微調整することが重要です。企業は既存顧客と未取引顧客の違いをしっかりと理解し、それぞれに合わせた戦略を展開することで、マーケティングの成功を収めることができます。